【6月29日 AFP】国連(UN)の人権高等弁務官は28日、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が「首都」と位置付けるシリア北部ラッカ(Raqa)で10万人もの民間人が身動きの取れない状況になっているとして警鐘を鳴らした。同市内では米軍支援部隊がIS掃討作戦を進めている。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の調査によると、ラッカ市内での空爆および地上攻撃により、6月1日以降に少なくとも173人の民間人が死亡。しかし、この数字は控えめなもので、実際の犠牲者の数はもっと多い可能性があるという。

 OHCHRは声明で、ラッカでは「空爆や地上からの攻撃が激化し、最大で10万人の民間人が身動きの取れない状況にある」と説明。ISが避難を阻止しているとみられ、民間人が避難しようとしても、地雷や銃撃で死亡する危険があると述べている。

 ゼイド・ラアド・アル・フセイン(Zeid Ra'ad Al Hussein)国連人権高等弁務官は声明で、「ラッカではこの3週間、爆撃が激化し、ISIL(ISの別称)の残虐行為とそれを打破しようとする激烈な戦闘のはざまで住民は恐怖に震え、避難先を求めて混乱のさなかにあると伝えられている」と報告した上で、同市内でIS掃討作戦に参加している国際部隊を含めたすべての勢力に対し、作戦の見直しと、「民間人の犠牲を避けるためにあらゆる適切な予防措置を講じるとともに、国際法を徹底的に順守」するよう求めている。

 クルド人とアラブ人の合同部隊「シリア民主軍(SDF)」は数か月にわたってラッカ包囲作戦を進めてきた後、6月6日に同市内に進攻し、これまでに4分の1を制圧している。 (c)AFP