■企業家活動のゴールドラッシュ

 銀行大手である「シティグループ(CitiGroup)」の慈善事業財団から支援を受けているものの、このプロジェクトはチャリティーではない。運営費は、事業家たちの商品がオンラインで販売され、利益をあげたときに取り戻せる。ソウェトの実店舗は2016年にオープンしてから、80もの小規模な事業家たちと契約を交わし、現在は毎月10万ランド(約87万円)を売り上げる。「ボックスショップ」のチームはすでに新たな店舗のための場所をダーバン(Durban)で確保しており、ほかに大きなイベントと同時に15のポップアップショップを立ち上げることも計画中だ。

 政府は2016年、この地区の開発に60億ランド(約527億600万円)を費やした。経済戦略の一環として小規模な事業を起こすためのものだったが、南アフリカの旧黒人居住区域は商業活動の拠点になることに苦労している。「グローバル・アントレプレナー・モニタープ(Global Entrepreneurship Monitor)」グループによると、ビジネスを始める市民の数は、エジプト(Egypt)やブルキナファソ(Burkina Faso)では南アフリカの6倍に及ぶ。しかし南アフリカでは、労働年齢層の38%である都市人口の約半数が旧黒人居住区域に住んでいる。そのため南アフリカは、ソウェトのゴールドラッシュによって、国で最も貧しいソウェト市民に利益が定着されることを期待している。

 49歳のヴェラフィ・ムポルウェニ(Velaphi Mpolweni)は、2013年からヨハネスブルク(Johannesburg)のつつましい家の裏で家具を制作し始めた。「『ボックスショップ』から支援を受ける前は誰も商品を見てくれなくてとても苦労した」とソウェトの端にある、騒がしく、おがくずがまき散らされた「ファーンテック(Furntech」」の地域作業場で語る。ムポルウェニは現在、毎年67万ランド(約600万円)を売り上げ、4人のスタッフを雇う。アメリカの顧客にシャンデリアを提供する大きな契約を取り付けたばかりだ。

 ソウェトに住む33歳のオスカー・ヒラリー(Oscar Hilary)はムポルウェニに建具屋として1年前に雇われたが、上司の国際的な露出こそが仕事を途切れさせない鍵なのだと信じている。「本当に助かっている」とオスカーは言う。「我々を前進させてくれるよ」(c)AFP/ Gregory WALTON