■競争にこだわらない高潔のスポーツだったはずが…

 ヒマラヤ(Himalaya)登山については、長年その記録をまとめ非常に信頼度が高いとされる「ヒマラヤン・データベース(Himalayan Database)」が存在する。

 1920年以降、ネパール国内約400か所の登山記録を保管しているこのデータベースは、著名山岳ジャーナリストのエリザベス・アン・ホーリー (Elizabeth Ann Hawley)氏(92)が立ち上げた。ホーリー氏は、エベレスト登頂を世界で初めて達成したニュージーランドの登山家、故エドモンド・ヒラリー(Edmund Hillary)氏が「登山界のシャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)」と呼んだ女性だ。

 近年このデータベースの管理業務の大部分を担当しているビヤリング氏は、「登頂したと報告を受ければ、私はその人を信じる。うそをつけば、死ぬまでそれを背負って生きなければならないのはその人だから」と話している。

 同データベースのエベレスト登頂記録には、「確認中」が21件、また登山家が主張通りに登頂を達成しなかったことが既に判明している「非公認」が18件ある。

 ビヤリング氏は「登山はかつて高潔なものだった。登山家の言葉が信用できなくなったら──それは悲しいことだ」と嘆いた。(c)AFP/Paavan MATHEMA and Annabel SYMINGTON