【6月8日 AFP】イラクのクルド自治政府は7日、独立の是非を問う歴史的な住民投票を9月25日に実施すると発表した。イラク中央政府は反対しており、トルコなど周辺国からも反発の声が上がる可能性がある。

 クルド自治政府の議長府が出した声明によると、住民投票の実施日はマスード・バルザニ(Massud Barzani)議長やクルド人自治区の政党議員らが出席した会議で決まった。

 クルド人は第1次世界大戦(World War I)後に独自国家を持てなかったため、居住地域がイラン、イラク、シリア、トルコに分散している。そのため「国を持たない世界最大の民族」と呼ばれることも多い。

 住民投票は、大詰めを迎えているイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」からのモスル(Mosul)奪還作戦が終結した後のイラクで大きな危機をもたらす恐れがある。奪還作戦では対立するイラク政府軍とクルド人部隊が一時的に共闘しており、両者は今後もクルド人自治区の近隣地域に展開することになっている。

 イラクのクルド人は総じて独立を支持しているが、住民投票で賛成多数となっても独立に向けた事業のほんの始まりにすぎず、独立には政治面でも経済面でも大きな障害がある。

 議長府の声明では、住民投票を実施する地域には自治区外の「クルディスタン地域」も含まれると明記。同地域はクルド自治政府とイラク中央政府の双方が主権を主張するイラク北部一帯を指し、石油資源が豊富な要衝キルクーク(Kirkuk)県なども入る。

 国内に多数のクルド人を抱える隣国トルコは、イラクでの分離独立が自国に飛び火することを警戒している。クルド自治政府は主な収入源である石油の大半をトルコ経由のパイプラインで輸送しているだけに、トルコが反対すれば独立にとって大きな問題となる。(c)AFP/Abdel Hamid Zebari with W.G. Dunlop in Baghdad