米のパリ協定離脱、一番困るのは誰か?考えられる影響
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【6月3日 AFP】196か国・地域の賛同を得て生まれた地球温暖化対策の国際枠組「パリ協定(Paris Agreement)」を米国が離脱することで、温暖化対策には実際にどのような影響が出るのだろうか。
■気温上昇幅が0.3度拡大?
パリ協定は、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2度未満に抑えるとする目標を定めている。
科学的な予測によれば、パリ協定の目標が達成されても地球の気温は3度上昇するとの見方が出ており、今後、その目標を大幅に引き上げる必要が出ている。
しかし、世界気象機関(WMO)大気研究局のディオン・タルブランシュ(Deon Terblanche)氏は、米国がパリ協定を離脱することで、地球の気温の上昇幅は0.3度拡大する可能性があると指摘している。
■関係機関が資金難に?
トランプ大統領は「緑の気候基金(GCF)」によって「米国は巨額の拠出金の納付を強制される恐れがある」と主張。
GCFは、発展途上国や温暖化に伴う災害が発生する恐れのある国々に対し、化石燃料から代替燃料への切り替えや温暖化対策を後押しするために設立された。
実際、専門家が指摘している通り、バラク・オバマ(Barack Obama)前米政権はGCFに30億ドル(約3300億円)の拠出を約束。GCFには現在約100億ドル(約1兆1000億円)が集まっている。米政府はこれまでに約10億ドル(約1100億円)を拠出し、トランプ大統領は残る20億ドル(約2200億円)の拠出を取りやめる考えを明らかにしている。
GCFは、多国間で温暖化対策を支援する唯一の基金だ。温暖化対策資金は議論を呼んだ論点で、途上国はパリ協定に参加する上で資金提供を保証するよう求めていた。
「資金の問題は容易には片付かないだろう」と、パリ協定が採択された国連(UN)の会議で議長を務めたフランスのローラン・ファビウス(Laurent Fabius)元外相は言う。「資金を(米国以外)どこかから集めなければならなくなる」
パリ協定は2015年の国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第21回締約国会議(COP21)で採択された。そのUNFCCCの昨年の予算全体の約4分の1に相当する約400万ドル(約4億4000万円)は米国が拠出していたが、今後は米国からの拠出もなくなる。
だが米慈善団体ブルームバーグ・フィランソロピーズ(Bloomberg Philanthropies)は2日、UNFCCC事務局に1500万ドル(約16億6000万円)の資金提供を申し出た。
■連鎖反応で離脱国が続く?
米国がパリ協定離脱を表明したことで、温室効果ガスの排出量削減に抵抗を示す国々の間で米国に続く動きが出るのではないか、あるいは少なくとも排出削減目標の引き上げへの意欲をそぐことにつながるのではないかと懸念する声も上がっている。
しかしすでに欧州諸国と中国、インドは改めてパリ協定を履行する意向を示している。一方、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は2日、離脱の決断を下したトランプ大統領を「裁く」ことはしないと述べた。(c)AFP/Mariëtte Le Roux