■遠隔操作

 この翌日、光で活性化された雌のハタネズミは、見知らぬ雄よりもパートナー候補の雄に対して、交尾をした場合と同程度の明らかな親近感を示した。

 リュー氏は、AFPの取材に応じた電子メールで「雌が雄の近くにいる際に、前頭前皮質による報酬部位の制御を再現するだけで、雌がその雄に対してどれほど親しげに行動するかに影響を与えることができた」と説明している。「これは、つがいの形成に影響を及ぼす脳回路を遠隔操作するようなものだ」

 今回の研究は、人の社会的行動に関する研究に示唆を与えるとともに、自閉症や統合失調症といった、社会的なつながりの形成に難しさを示す患者の治療に役立つ可能性もあると、研究チームは指摘している。これには、恋人と一緒の時間を過ごすことで得られる楽しみといった感情を、2つの脳部位間の情報伝達を活性化することで経験することが可能になるといった例も含まれるという。

 研究の結果を受け、「ハタネズミにおけるつがいの絆の形成と、人が恋に落ちることは、その根底において神経機構の多くを共有している可能性が高い」と、リュー氏は説明している。

 人の場合でも、恋人の写真を見たり、においを嗅いだり声を聞いたりすると、ハタネズミで調査された脳の報酬系の同じ部位が活性化されることが、これまでの研究で知られている。

 共同研究者のエリザベス・アマデイ(Elizabeth Amadei)氏は、「だがこれまでは、この種の感情を引き起こすために脳の報酬系がどのように作用しているかについては分かっていなかった」と話した。(c)AFP/Mariëtte Le Roux