【5月27日 AFP】ロシアが国連(UN)と北大西洋条約機構(NATO)に加え、少なくとも39か国の何百もの個人や団体を標的にしたサイバースパイ・偽情報活動を行っていたことが分かったと専門家グループが25日、明らかにした。

 カナダ・トロント大学(University of Toronto)のコンピューター・セキュリティー専門家グループ「シチズンラボ(Citizen Lab)」の主任研究員ロナルド・デイバート(Ronald Deibert)氏によると、同グループの研究により「政府、産業界、軍、市民社会の何百もの標的に対する大規模なサイバースパイ・偽情報活動」の存在が明らかになったという。

 この調査結果は、2016年の米大統領選におけるヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)元国務長官の陣営に対するサイバー攻撃──米情報機関はロシアが実施したとしている──が氷山の一角に過ぎないことを示唆している。

 シチズンラボの報告書によると、このスパイ活動は政府、軍、産業界だけでなく、ジャーナリスト、学者、反対勢力、活動家らも標的にしてきたという。著名な標的としては大使、軍幹部、エネルギー企業の最高経営責任者(CEO)、ロシアの首相経験者、退職した米高官、欧州やアジアの閣僚らがいる。

 デイバート氏はブログへの投稿の中で、ロシアの指示の下に行われたサイバースパイ・偽情報活動は「フィッシング」攻撃によって標的の認証情報を取得し、正しい情報と偽情報を注意深く交ぜた情報を流して何が真実なのか分からなくするというパターンで行われていると指摘した。

「ロシアには『ディスインフォルマツィヤ(偽情報)』として知られるものの長い歴史と経験があり、それはソ連時代から行われてきた」とデイバート氏は言う。

 同報告書によると、このような情報活動はアフガニスタン、アルメニア、オーストリア、カンボジア、エジプト、ジョージア、カザフスタン、キルギスタン、ラトビア、ペルー、ロシア、スロバキア、スロベニア、スーダン、タイ、トルコ、ウクライナ、ウズベキスタン、ベトナムなどの当局者に対しても行われた。(c)AFP