【5月19日 AFP】サイバー攻撃への対策で投じられる費用が世界中で飛躍的に伸びている──。今年の世界のセキュリティー市場は推定1200億ドル(約13兆3600億円)で、わずか十数年で30倍の規模となりそうだ。

 だがこの巨大な市場規模も、世界中でコンピューターがまひした最近のランサムウエアによる攻撃を受けたあとでは、さらに大きくなることが予想される。

 サイバーセキュリティー調査研究企業の「サイバーセキュリティ・ベンチャーズ(CyberSecurity Ventures)」によると、世界のサイバーセキュリティー市場は2004年は35億ドル(約3900億円)だったが、2017年は「われわれの予想で1200億ドルとなる」という。 同社はまた、5年後の2021年にはサイバーセキュリティー製品とサービスに対する全世界の支出は「1兆ドル(約111兆円)を上回る」と予想する。

 皮肉なことに、このような大きな成長は、英国の病院からロシアの銀行まで数十か国が標的となった、ランサムウエア「WannaCry」のような大規模サイバー攻撃によってもたらされる。

 NTTグループ傘下のセキュリティー専門企業「NTTセキュリティ(NTT Security)」によると、対象となる最も一般的な事象はランサムウエア関連のもので全体の22%に上るという。金融機関に限定すると、この数字は56%に跳ね上がる。

 セキュリティー問題に詳しい専門家は「2014年に多発したランサムウエアによるサイバー攻撃は、セキュリティー関連企業に多大なるビジネス機会を提供するものとなった」と指摘する。「この時、多くの企業が自分たちの脆弱(ぜいじゃく)性に初めて気付かさせられた」のだという。

 企業は「投資に対する見返りが判断できない」ために、サイバー攻撃に対する防御の必要性を認識するまでに時間がかかった。また、どの攻撃を免れて、それに幾らかかったのかを把握できないということも二の足を踏ませた原因だ。

 だが差し迫った脅威はランサムウエアによる攻撃だけではない。

 ネットワークに接続の端末やその他製品へのハッキング、個人および財政データの窃盗、そして政治家のオンラインでの活動に触手を伸ばすハッカーの存在──このような脅威を背景に、サイバーセキュリティー市場は今後さらなる成長を遂げるものと予想される。(c)AFP/Julie CHARPENTRAT