【5月16日 AFP】国際通貨基金(IMF)の融資プログラムによって財政緊縮策が課された国では、子どもの健康を守る親の能力がそがれる傾向があるとする研究が15日、査読学術誌の米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表された。

 同研究は、IMFが支援対象国に要求することの多い社会保障支出の大幅な削減によって、被支援国の教育提供能力が奪われ、貧しい家庭の経済事情は向上せず、雇用に適応する能力も伸びず、経済変動に対し一層ぜい弱になると指摘している。中でもIMFプログラムが導入されている国の地方部では、子どもの栄養不良に対する、教育による保護効果が17%程度そがれるという。

 研究は英国のケンブリッジ大学(University of Cambridge)、オックスフォード大学(University of Oxford)、オランダのアムステルダム大学(University of Amsterdam)、ニュージーランドのワイカト大学(University of Waikato)の研究者らが2000年の前後5年間に実施したもので、研究データの対象とされたのは貧困国および中所得国67か国の28億人。

 報告書の著者の1人で、ケンブリッジ大学の経営大学院「ケンブリッジ・ジャッジ・ビジネス・スクール(Cambridge Judge Business School)」のアデル・ダウード(Adel Daoud)氏はAFPに対し「われわれの研究では、ある種の間接的な影響が観察された。IMFプログラムの導入下にある国々では、地方部の親の方がやや子どもの世話に苦労している。このグループでは、IMFプログラム下にない国々の同じような地域と比べ、子どもの健康レベルが実際にやや低い」と述べた。

 IMFのエコノミストらは昨年、財政緊縮策が所得の不均衡を悪化させ、経済の成長と安定を損なうことがあることを発見しているが、開かれた競争市場と金融の安定に尽力する方針に変更はないとしている。(c)AFP/Douglas Gillison