■未研究の効能と薬物犯罪の狭間で

 LSD、すなわちリセルグ酸ジエチルアミドは、1960年代の反体制文化で悪名をはせた効力の強い合成ドラッグだ。大量摂取すると幻覚を引き起こし、長時間にわたり知覚と認知機能を大幅に変化させる。

 マイクロドージングは、事例としては薬効や能率向上が示されているが、長期摂取による毒性といった潜在的リスクは不明だと、米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)で薬物乱用と依存症を研究しているマシュー・ジョンソン(Matthew Johnson)氏は指摘する。同氏はAFPの取材に対し、マイクロドージングは財政面と法律面の二つの理由で「まったく研究されていない」と語った。

 米国でLSDが最初に非合法化されたのは1966年で、70年にはサイロシビンと一緒に、ヘロインやメスカリンなどと並ぶ法的規制が最も厳しい薬物のカテゴリーに分類された。

 だが、マイクロドージングの対照研究は「認知促進と抗うつ効果の可能性には効果があり得るという点で、絶対的に興味深く説得力がある」とジョンソン氏は言う。同氏自身が行った研究ではサイロシビンの使用によって、がん患者の不安やうつへの対処が改善したり、喫煙者の禁煙を支援するなどのプラスの結果が出ている。

 ウォルドマンさんは最終的には法的なリスクが理由で、マイクロドージングの継続をあきらめざるを得なくなった。最初の30日は友人の友人からLSDを受け取っていた。だが、それ以上を調達することには自分がストレスを感じた。

 薬物をめぐる処罰は州により異なるが、大体は連邦法と同様で、LSD所持の初犯は最高1年の禁錮刑または罰金1000ドル(約11万円)だ。元弁護士として薬物犯罪の被告人を弁護した経験もあるウォルドマンさんは、自分がその危険を冒すことは正当化できないと語った。

 すぐではないだろうがLSDが合法化されるまで、二度とマイクロドージングはしないだろうとウォルドマンさんは述べたが「また自殺したい気分が始まらない限りね。死ぬか、犯罪を犯すかの選択だったら、犯罪を犯す」ことを選ぶと言う。(c)AFP/Maggy DONALDSON