■傘の柄や竹で中絶手術を行う偽医者に頼るしかない

 ティリさん同様、絶望した多くの女性たちは、闇市場で販売されている怪しげな薬にすがる。もぐり営業の医院を訪れる女性たちもいるが、そうした医院を経営しているのは、医療知識を持たず、傘の柄から小枝、竹などありとあらゆるものを使って胎児をかき出そうとする偽医者だ。

 専門家らによると、商業の中心地ヤンゴンだけでも医師免許のない外科医が数十人おり、3万~10万チャット(約2500~8300円)で中絶手術を請け負っている。そうした医者に手術を受けた場合、出血多量であっという間に亡くなるか、いずれ命取りとなるような感染症をうつされるケースもある。

 人権活動家らによると、既婚女性の場合は、夫の求めを断るか、夫に避妊具を使用させることができずに妊娠してしまうことが多いという。

 女性の権利団体、アクハヤ・ウィメン(Akhaya Women)の創設者ター・ター(Htar Htar)さんは、女性たちは夫との性交渉に合意しないと脅されるのだと語る。

 ミャンマーの前軍事政権は避妊に反対していたが、2011年に準文民政権が発足すると、こうした傾向に変化が訪れた。同政権は、既婚女性がより手軽に避妊具を入手できるようにする計画を実施した。

 国連人口基金(UNFPA)は、2年間で約1000万ドル(約11億円)を妊産婦の健康と家族計画の改善に充ててきた。だが、世の中の認識を変えていくのは一筋縄ではいかない。

 中絶に関する法律を改正するのは、強硬路線を取る仏教集団もいるミャンマーでは非常に慎重さを求められる問題だと指摘する声もある。

 だがティリさんのような女性たちにとっては、中絶は生死に関わる問題だ。ティリさんはこう語った。「(中絶が)合法なら、多くの命が救えるのに」(c)AFP/Caroline HENSHAW