■無駄なものは一切ない

 高級ヒラタケ「ブラン・ドグリ(Blanc de Gris)」を専門に栽培する都会の農場を友人と共同で設立したリンチゴティエさんは、再生資源を使ってキノコを栽培することで「廃棄物をなくした」と説明する。

 リンチゴティエさんは循環経済の基本原理に触れ「廃棄物は、資源だ。これまでは正しい使われ方をしていなかっただけだ」と語った。

 2人が会社を立ち上げたのは、3年前。リサイクルはコストを大幅に削減し、環境的にも持続可能な方法だと唱える。

 キノコの栽培には、近所から譲り受けたコーヒーの出し殻とビールの搾りかすを交ぜた覆土を、多くの栽培業者が使用している使い捨てのプラスチック袋ではなく、水はけ用の穴の開いたバケツに敷き詰めて使っている。

 マヘウさんは、外食産業で長年働いてきたことから、モントリオール市内の最高レベルのレストランのシェフたちに直接連絡をとり、キノコを持って行って吟味してもらうことの重要さを心得ている。

 キノコの価格は、レストランのオーナー向けには送料込みで1キロ当たり25カナダドル(約2000円)。飛び込みの注文に応じることもあり、その場合は0.5キロ当たり15カナダドル(約1200円)で販売している。価格の高さには賛否両論がありそうだが、ビジネスは好調だ。

 ケベック大学モントリオール校(UQAM)の社会学者、ルネ・オーデ(Rene Audet)氏は、エコロジーや有機農法と関連して「少し割高でも地元産の食品を喜んで買い求める消費者が増えている」と指摘する。