■性産業は金のなる木、警察も黙認

 そう語るこの警察幹部の背後では、露出度の高い服を着た女性たちが並び、「パタヤで一番魅力的な女の子たち」とうたった店に客引きをしている。

 別の地元警察の幹部は「そこで働く女性や女装した若い男性たちは、売春に関与していない」と、一般的に現実を踏まえない、ある種のタイ警察のレトリックを繰り返した。

 パタヤの大勢の住民にとって、今回の取り締まりもお決まりのパターンだ。海外で否定的なニュースが見出しを飾り、それを受けて当局が「目立ちはする」が「限定的」な性産業の取り締まりを行う。住民の生活を支えているのは性産業だからだ。

 店の所有者、女性たち、マッサージ店、ホテル、タクシー、マフィア、さらには多くの住民らが主張するように、取り締まりを担当している警察官たちにとっても、性産業は金のなる木だ。

 20年間にわたってタイの犯罪を取材してきた英ジャーナリストのアンドルードラモンド(Andrew Drummond)氏によると、タイの人々はこうした状況を「ポン・プラヨーテ(pon prayote)」と呼ぶ。同氏によると、「(ポン・プラヨーテとは)みんなの利益になることを意味し……大金を生み出すもので、警察の黙認なしにはまず成立しないものだ」と語った。

 保守的なタイで売春は違法とされているが、タイ人、外国人を問わず顧客を相手にそこかしこで行われている。

 業者たちは訴追を避けるために使い古された抜け道を使う。店側は、店内でただ客と話をして楽しませるだけという名目で女性らを雇う。