■「FGM受けないと、ふしだらに」

 数年前に死去した母親の跡を継いだという女性民間療法士のハディージャ・イブラヒムさんは、FGMを受けない女児には「精神疾患や障害」のリスクがあると主張する。この地域の民間療法士らは、FGMを受けないとふしだらな女性に育つと口をそろえ、またFGMを受けていないイスラム教徒女性の祈りは神に聞き届けられないという言い伝えも広く信じられている。

 FGMの習慣があるのはインドネシアの地方部に限った話ではない。首都ジャカルタ(Jakarta)でもイスラム教徒の家庭では一般的にみられる。医師が陰核の包皮を針で刺すといった、少し温和な方法が採られている点以外、基本的に違いはない。

■国内最大のイスラム教団体は今も支持

 政府は、文化的そして宗教的な配慮から、FGMそのものを完全に禁止するとしていた方針を転換し、リスクを一掃した上で安全な施術を確保する道を探ってきた。

 当局は、国内で最もよく行われているFGMについて、包皮に針を刺すだけで女性器を切除しているわけではないとしながら、これらの一般的な方法は、FGMには該当しないと主張している。

 主にアフリカや中東諸国では陰核を完全に切除するケースもあり、それに比べるとインドネシアのFGMは一般的にはそこまで残酷なものではない。だが国連は、FGMを「女性器を医療以外の目的で傷つける」行為と位置づけ、不妊症や出産時の合併症などを引き起こす恐れがあるとし、インドネシア政府の姿勢に異議を唱えている。

 近年、インドネシア国内でも、人権活動家やイスラム教の主要団体が、女性の人権を侵害しているとしてFGMに反対の声を上げ、論争が過熱している。国内2位の規模を持つイスラム教団体は信者らに対してFGMに行う動きに加わらないよう呼び掛けている。だがその一方で、国内最大の団体は今なおFGMを支持する姿勢を崩していない。

 女性への暴力に関する政府支援の全国委員会に所属するコリラ・アリ(Khorirah Ali)氏は、「私が信仰するイスラム教には、女性器切除を認める一節はどこにもない。コーランにも書かれていない」と述べ、この宗教的習慣を非難した。(c)AFP/Olivia Rondonuwu