【4月26日 AFP】生まれたばかりのザトウクジラとその母親は、鳴き声のトーンを落として「ひそひそ声」でやり取りをしながらシャチなどの捕食者から襲われないようにしている──ザトウクジラのこれまでに知られていなかった生存戦略を明らかにした論文が26日、発表された。

 英生態学会(British Ecological Society)発行の科学誌「ファンクショナル・エコロジー(Functional Ecology)」に掲載された論文の筆頭著者シモーヌ・ビデセン(Simone Videsen)氏はAFPに対し、「クジラたちは、迷惑な相手に話を聞かれたくないと思っている」と説明した。

 クジラは、大きな鳴き声を上げて同じ群れの仲間たちを集めることで知られている。ザトウクジラの雄は交尾期になると、反響音を発して雌を引き付ける。

 一方でビデセン氏によれば、シャチなどの捕食者はクジラ同士が交わす「会話」を聞き取り、それを手掛かりにして子クジラの居場所を突き止めることがあるという。

 デンマークとオーストラリアの研究チームは今回、南極海(Southern Ocean)のザトウクジラが交尾と出産のために暖かい海水を求めて集まるウエスタンオーストラリア(Western Australia)州のエクスマウス湾(Exmouth Gulf)で、母クジラ2頭と子クジラ8頭をそれぞれ24時間にわたって追跡調査した。 

 研究チームは、クジラに取り付けたタグを使って、クジラのかすかな高い鳴き声や、うなるような低い声を録音。ビデセン氏によると、場合によって雄の鳴き声は数キロ先まで届くが、同研究チームが調査した母子間の鳴き声は100メートル未満の範囲でしか聞き取れなかった。

 母と子が泳いでいる際に検知されたのが低い鳴き声だったことから、親からはぐれた子クジラを餌食にしようとするシャチが出没する見通しの悪い繁殖海域では、母子は控えめな音を出すことで離れ離れにならないようにしていると考えられる。また、ごく小さな鳴き声にするのは、母クジラが交尾を求める雄を遠ざけ、育児に専念するためでもあるという。(c)AFP/Valerie DEKIMPE