【4月12日 AFP】努力家で絶えず前進を続ける酒井宏樹(Hiroki Sakai)は、フランス・リーグ1のオリンピック・マルセイユ(Olympique de Marseille)の心をとらえ、クラブ内では母国の大使と見なされている。

 AFPのインタビューに応えた日本代表右サイドバックの酒井は、「フランスには2人しか日本人がいないので、責任を感じています」と語る。

 日本代表の仏人アシスタントコーチ、ジャッキー・ボヌベー(Jacky Bonnevay)氏は「彼には、君は大使だ。注目を浴びているぞと常に言っている」と言う。

 リーグ1でプレーするもう一人の日本代表選手はメッス(FC Metz)に所属するGK川島永嗣(Eiji Kawashima)だが、今季は控えとして1試合の出場にとどまっている。

 ハノーバー96(Hannover 96)の2部降格でドイツ・ブンデスリーガ1部での4年間の生活が終わった酒井は、フランスにしっかりと順応している。

 今月12日に27歳の誕生日を迎える酒井は、妻と2歳の娘とともに暮らすカシス(Cassis)にある海辺のテラスで、「自分ではそこまでとは思っていません。グレードは上がったとは感じますけど。フランス語もしゃべれませんし、フランスサッカーについてもぴんときませんが、自分のベストを尽くすことで周りが助けてくれるんです」と明かした。

 1985年から2シーズンにわたり自身もマルセイユでプレーしたボヌベー氏は、要求の高い環境の中ですぐに全力を出して取り組まなければならないと酒井を諭した。

 酒井はボヌベー氏から「良いプレーをしなければベンチに追いやられ、チームに戻れなくなるぞ」と言われたという。

 酒井は、仏サッカー界を象徴するような人物である日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ(Vahid Halilhodzic)監督からマルセイユへの移籍を勧められた。

 パリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)でセンターフォワードとしてプレーし、同クラブで指揮官も務めたハリルホジッチ監督は、「OM(マルセイユ)がヒロキについて尋ねてきたとき、彼には規律があり、真摯に取り組むナイスガイで、素晴らしい人物だと伝えた」とすると、これまで代表戦34試合に出場している酒井について、「もう少しアグレッシブにプレーすることを覚える必要がある」と続けた。

 一方でマルセイユのルディ・ガルシア(Rudi Garcia)監督には、酒井の不十分なフランス語以外に不満はないようだ。

「それが一番大きな挑戦です。勉強しないと。試合中は英語と片言のフランス語でしゃべってます」と酒井。

「ちょうど9か月を過ごして、精神的にも成長して、ここでの生活には完全に順応しています」

「それに、サポーターには嫌われてはないようだし」と、酒井はにやついた。

 マルセイユ(Marseilles)市内の日本食レストランをしばしば訪れる酒井だが、地元料理の味にも舌鼓を打っている。

「ここは魚がとても新鮮で、いろいろな種類の料理があります。ワインも少し飲みますし、食べ物にも慣れてきました。うさぎを食べてみました」

「たまに無性に帰りたいと思いますけど、ヨーロッパはキャリアが軌道に乗った場所なので」

「南フランスがこんな良いとは思ってなかったです。ドイツは雨ばかりで、なにもかも灰色だったんで。ここは楽園です」と語りながら、酒井は4月からビーチで水遊びする人たちに向け腕を伸ばした。(c)AFP/Emmanuel BARRANGUET