【4月6日 AFP】シリア北西部の化学兵器が使用されたとみられる現場で、20代のムハンマドさんは、両親とおいが数分のうちに次々と地面に倒れ、身もだえするのを目の当たりにした。

 AFPの取材に応じたムハンマドさんは、その青い目を終始伏せたまま、前日に自身が経験した悲劇を回想した。

「外で音がしたので父が表に出たら、人が地面に横たわっていた。父も倒れて震えだし、母が『こっちに来てお父さんを見て!』と叫んだ」。ムハンマドさんは、妹とその4歳の息子と一緒に表に飛び出した。

「叫びながらそこに立っていた母が突然、地面に倒れた。それからおい、次に妹も」とムハンマドさん。家族は口から白い泡を吹き、激しく身もだえしていた。助かったのは妹だけだった。「化学物質があると思ったが、逃げようとは思わず、人々を助けて運び出すことしか考えなかった」

 ソファーに横たわり点滴を受けるアブドゥルハミドさん(28)は、悲嘆に暮れる親戚に囲まれながら「家族19人が殺された」と言葉を振り絞った。

「マスクを付けたが何の役にも立たなかった。人々はただ地面に倒れ始めた」。現場に救急車が到着する中、アブドゥルハミドさん自身も倒れた。「負傷者を一緒に運んでいた人が倒れ、また別の人が倒れ……しまいには、全員がガスにやられてしまった」と、アブドゥルハミドさんは顔をしかめながら語った。

「私の子ども2人、アフマドとアヤ、そして妻のダラールも死んだ」。部屋の外では、彼の母親が声を上げて泣きながら、自分をたたき始めた。

 シリア北西部イドリブ(Idlib)県の反体制派地域にあるハンシャイフン(Khan Sheikhun)で起きた攻撃では、これまでに86人が死亡した。世界保健機関(WHO)と国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」は、被害者にはサリンのような神経ガスにさらされた兆候が見られるとしている。(c)AFP/Omar Haj Kadour