【3月30日 AFP】欧州宇宙機関(ESA)がロシアと協力して進めている火星探査計画「エクソマーズ(ExoMars)」で、生命の痕跡を回収する任務を担う移動探査車の2021年の着陸予定地について、科学者チームは29日、その最終候補2か所を選定したと発表した。

 仏オルレアン(Orleans)にある分子生物物理学センター(Center for Molecular Biophysics)の研究責任者、フランセス・ウェスタール(Frances Westhall)氏は、記者会見で「激しい議論の末、オキシア平原(Oxia Planum)とマウルス峡谷 (Mawrth Vallis) の2か所が選出された」と発表した。

 2020年の打ち上げの数か月前までに下される予定の最終決定をめぐっては、いくつかの点で、科学者と技術者との間で意見の対立が起きるに違いない。一方の着陸候補地は、地質学的な変化により富んでおり、もう一方は岩が少なく、探査車が移動しやすいからだ。

 だが、どちらの場所にも、粘土が豊富にある。これにより、これらの場所は「過去の生命の痕跡を含んでいる可能性のある」有望な環境と考えられると、ウェスタール氏は説明。「粘土が好ましい理由は、有機物を吸着して保持する性質があるからだ」と付け加えた。

 放射線が降り注ぐ火星表面の不毛地帯に、生命体が存在する可能性は低い。だが、火星大気中に含まれるメタンの痕跡は、かつて火星の地下で何らかの生命体、おそらくは単細胞の微生物が活動していた可能性があることを示唆している。

 数十億ドル(数千億円)規模のエクソマーズ計画では、火星にまだ水が存在した、少なくとも36億年前の太古の昔から残る生命の痕跡を探査する予定だ。

 ドリル、車輪や脚などを装備した、小型車ほどの大きさの移動探査車は、6か月の探査期間中に8回の掘削を行うように設計されており、その過程で合計約12キロを走行する。