■加熱する議論

 研究チームが米国の患者に基づいて行った2015年の研究は、科学界に大きな議論を巻き起こした。

 当時の研究をめぐっては、がんが不可避で予防できないケースがそれほど多いのなら、食事に気を配ったり日光から身を守ったりする必要はないと考える人が出てくる恐れがあるとして、批判する声が上がった。

 2015年12月には、がんの症例の大半が、ランダムな変異ではなく、喫煙や紫外線への暴露などの環境要因によって引き起こされるとする、チームの研究に反論する論文も発表された。

 一連の流れについて、英オープン大学(Open University)のケビン・マッコンウェイ(Kevin McConway)名誉教授(応用統計学)は、「今回の論文が、この問題に最終的な結論を下すには至っていないことは確かだ」とコメントしている。同名誉教授は今回の研究には参加していない。

 一般の人にとって、今回の研究から学び取れる内容は、多くのがん性変異は避けることができないが、多くのがん症例は予防が可能ということだ。

「変異の生成にランダムな複製成分が関与するかに関係なく、環境的原因や遺伝的原因を取り除くことで、多くのがん発症リスクを大きく低減させることは可能」とマッコンウェイ名誉教授は話した。(c)AFP/Kerry SHERIDAN