【3月14日 AFP】カナダ・モントリオール(Montreal)で11日、ロックオペラの草分けであるピンク・フロイド(Pink Floyd)のアルバム「ザ・ウォール(The Wall)」に基づいた伝統的なグランドオペラが初演を迎え、同バンドの元メンバー、ロジャー・ウォーターズ(Roger Waters)もステージに駆け付けた。この街は、ウォーターズが約40年前にこのアルバムの着想を得た場所だ。

 ピンク・フロイドのベーシストだったウォーターズは1977年、大規模なワールドツアー中にモントリオールのオリンピック・スタジアム(Olympic Stadium)で行ったコンサート中、騒いでいたファンに激怒し、唾を吐きかけるという行為に出た。ステージで喝采を受けながら超然としてよそよそしい態度を取るといった自身の精神状態をきっかけにウォーターズが制作した「ザ・ウォール」は、2枚組アルバムとしては史上最高の売上を記録した。

 ウォーターズは今回、同アルバムを代表する楽曲にちなむタイトルを冠した「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール:ジ・オペラ(Another Brick in the Wall: The Opera)」の初日に合わせて再びモントリオールを訪問。オペラ・ド・モントリオール(Opera de Montreal)の劇場でカーテンコールに登場し、今回は唾を吐くこともなく、数分間にわたる拍手に応えた。

 同オペラでは、舞台中央に隠喩的な殺風景な壁が設置されているが、観客らの意識はすぐに映像を通して現在の出来事へと向けられる。映像では、安住の地へ逃れようとする移民を閉め出すことが目的の壁も含め、世界中で壁が築かれていく様子が示される。

 同演目には、ウォーターズによるオリジナルの歌詞や曲に加え、同アルバムが発売された当時まだ幼かった作曲家のジュリアン・ビロドー(Julien Bilodeau)が手掛けた楽曲も組み込まれている。

 ピンク・フロイドの人気はデヴィッド・ギルモア(David Gilmour)のギターによるところが大きかったが、「ザ・ウォール」の収録曲はほぼすべてウォーターズが書き下ろしている。同アルバムのコンセプトは、父親が戦死して過保護な母親に育てられる「ピンク」という登場人物が、ロックスターとして成功しながらも結婚生活が破綻し、罪の意識に駆られて全体主義に傾倒していくというもの。(c)AFP