【3月13日 AFP】シリア政府軍と反体制派の戦闘が続いていた同国第2の都市アレッポ(Aleppo)で、クラシックカーのコレクターのモハメド・モヒエルディン・アニス(Mohammed Mohiedin Anis)さん(70)は「傷ついた」自らのコレクションの一つ、1955年式の「ビュイック・スーパー」を悲しげに見つめている。

 アレッポ東部のシャー(Shaar)地区には激しい爆撃が加えられ、近くの建物から飛んできた大きなコンクリートの塊が車のボンネットに落下し、立派だったラジエターがゆがんでいる。

 アニスさんは「見てごらん。彼女が泣いているよ。傷を負い、私の助けを求めているんだ」と言って、家を修復するよりも先に車を修理するのだと誓った。アレッポは昨年12月に政府軍が反体制派を駆逐し、現在は銃撃戦が収まっている。

 アニスさんは1970年代にスペインのサラゴサ(Zaragoza)で医学生として過ごした後、イタリア北部トリノ(Turin)で伊自動車大手フィアット(Fiat)の車両の取扱説明書をイタリア語からアラビア語に翻訳する職業に就いていた。アレッポに戻り化粧品工場を立ち上げた後も、父親から受け継いだ車への情熱は冷めなかった。

 アニスさんが保有していた30台のコレクションのうち残っているのは20台で、残りは内戦の最中に破壊されたり盗まれたりした。

 車の好みは多岐にわたり、ビュイック(Buick)、キャデラック(Cadillac)、シボレー(Chevrolet)、ハドソン(Hudson)、マーキュリー(Mercury)など主に1950年代の米国車を好んでいる。またフォルクスワーゲン(Volkswagen)や、シトロエン(Citroen)のバン「2CV」も保有している。

 アニスさんは「これまで非常に幸せな生活を送ってきたがすべてが変わった。現在の生活は厳しいが、希望を捨ててはいけない」と述べた。(c)AFP/Sammy Ketz