■菜食中心

 国際研究チームは今回の最新研究で、ネアンデルタール人4個体の石灰化した歯垢(歯石)の中に閉じ込められたDNAの遺伝子分析を実施した。4個体のうち、2個体はベルギーのスピー洞窟(Spy Cave)から、残る2個体はエルシドロンからそれぞれ出土したものだ。

 歯石には、生物の口、気管、胃などの中に生息していた微生物や、歯間に挟まった食べかすなどのDNAが保存されている。これを後に分析することで、食べていたものや、健康状態を知ることができる。

 今回の研究では、ベルギーのネアンデルタール人が、ケブカサイ(毛サイ)、野生ヒツジ、キノコなどを日常的に食べ、狩猟採集民的な生活様式を形成していたということが分かった。遺伝子分析された対象としては過去最古の歯石となった。

 一方、エルシドロン洞窟のネアンデルタール人については、「肉を摂取していた痕跡はなく、松の実、コケ、キノコ、樹皮などで構成される菜食中心の食事をしていたようだ」とクーパー氏は声明で述べている。

 論文の主執筆者で、ACADのローラ・ウェイリッチ(Laura Weyrich)氏は、エルシドロンが当時、深い森林に覆われた環境にあったことを指摘。「一方のスピー洞窟のネアンデルタール人は大草原のような環境に暮らしていた。そこを歩き回っていた大型生物が主な食料源となっていたことは容易に想像できる」とAFPに語った。

 ポプラやペニシリンの痕跡については、病気にかかったスペインのネアンデルタール人の歯石からしか検出されなかった。(c)AFP/Pascale MOLLARD / Mariëtte Le Roux