【3月8日 AFP】牛の頭蓋骨がじりじりと照り付ける太陽の下に転がり、そのすぐ近くには腐敗した別の牛の死骸が横たわっている──これは、過去100年で最悪の干ばつに見舞われているブラジル北東部の光景だ。

 畜産農家のカージナウド・ペレイラさん(30)はがっくりと肩を落としながら、ほこりとサボテンの中を歩く。北東部セアラ(Ceara)州ノバカナア(Nova Canaa)にある彼の土地の隅には野外墓地のような一角が作られ、そこに牛やロバ、その他の家畜の死骸、約30体が放置されている。病気の拡大を防ぐためだ。

「ほとんどの動物は飢えや乾きで死んだ。悲しいが、それが現実だ。この5年間の干ばつで多くの動物が死んだ」と、ペレイラさんは言う。

 ブラジル北東部「セルトン(Sertao)」と呼ばれる半乾燥地帯では、人々は雨不足に慣れている。しかし、これほどの干ばつは誰も経験したことがない。2012年以降、降水量はほぼ皆無で、緑のない乾燥し切った風景はまるで山火事が起きた直後のようにすら見える。

 かつて、地域住民らに水を供給していた川や貯水池はすでに機能していない。当局によると、底をついた場所もいくつかあり、現在の貯水量は約6%と推定されている。

 専門家らは、さまざまな要因が重なり、このひどい干ばつが起きているものとみている。太平洋(Pacific Ocean)のエルニーニョ(El Nino)現象、北大西洋(North Atlantic)の水温上昇、そしてセアラ州の気温をこの50年で1.3度上昇させた気候変動だ。

 8州にまたがるセルトンでは、日々の洗濯や飲料用の水でさえ、ぜいたく品だ。政府の統計によれば、同地域に住む2500万人のうち300万人に十分な水を供給することができておらず、都市部を離れれば離れるほどその割合は高くなるという。

 彼らにとっては、貯水槽を満たしに来る政府の給水車が頼みの綱だが、1人当たり1日に約20リットルしかもらえない。世界保健機関(WHO)は、飲料、調理、衛生管理に1日50~100リットルを推奨しているが、これを大幅に下回っている。