【2月28日 AFP】先週末に行われたチェコ1部リーグの試合で、トーゴ代表FWのフランシス・コネ(Francis Kone)は、敵チームのファンに人種差別的な言葉を浴びせられながらも、命の危険にさらされた相手GKを救う英雄的な行動をみせた。

 25日に行われたボヘミアンズ・プラハ1905(Bohemians Praha 1905)対1FCスロバーツコ(FC Slovacko)の一戦、前半30分にロングパスを処理するため前に飛び出したボヘミアンズのGKマーティン・バーコベック(Martin Berkovec)は、猛スピードで同じくボールを追いかけてきた味方DFのダニエル・クルチ(Daniel Krch)と激しく交錯した。

 プラハ(Prague)のスタジアムに集まった観客が恐ろしい光景を見守るなか、28歳のバーコベックは舌をのみ込んだ状態でピッチ上で意識不明となった。するとピッチ上に倒れ込んだバーコベックに対し、真っ先にその場で緊急処置を行ったのは、スロバーツコでプレーするストライカーのコネだった。

 AFPの取材に対して「このプレーに関わっていたので、自分が近くにいた」とコメントしたコネは、審判に呼ばれたボヘミアンズの医療スタッフが現場に到着する前に、バーコベックの舌をどうにか抜き出すことに成功した。

 ボヘミアンズの広報担当者は、「こうした事故は一刻を争う事態だ。もし舌をのみ込んで窒息し始めたら、脳が停止してしまう。だから可能な限り迅速に行動しなければならない」と説明したうえで、「きょうマーティンの容体が安定しているとすれば、それは大いにフランシスのおかげだ」と話した。

■「時間が止まった」

 バーコベックはその後、フェイスブック(Facebook)に「迅速な対応で命を救ってくれたフランシス・コネに感謝したい。改めて、どうもありがとう」とメッセージを投稿し、早速命の恩人との面会をセッティングしたことを明らかにした。

 スコアレスドローとなったその日の試合後、ボヘミアンズファンの一人はツイッター(Twitter)で、「彼はきょう、大切なことを教えてくれた。それは自分だけじゃないと思う」とコネを称賛。さらに当日スタンドにいた別のサポーターも、チームの公式ウェブサイトで、コネの迅速な判断がいかに同クラブの熱狂的ファンに影響を与えたか証言している。

 男性はアクシデントが起きるまでの状況について「自分の隣には2人の男がいた。彼らは人種差別主義者で、言葉も…(差別的な)ふざけた内容だった」と説明すると、「そうしたら衝撃的なことが起こった。時間が止まったんだ。マーティンが倒れて動かなくなると、コネが真っ先に駆け寄ってきて、彼の舌を引き出した。敵チームのね」と語った。

「男2人を含むスタジアム中が静まり返った。スコアなんてどうでもいいし、コーンはこれで大丈夫だろう。フランシス・コネが彼を助けた。ライバル?黒人?いや、同じ一人の人間だ!」

 コートジボワール東部ボンドゥク(Bondoukou)で生まれた26歳コネは、母親側の国籍を選択し、トーゴ代表として2013年からプレーしている。これまでのキャリアではさまざまなクラブを渡り歩いており、タイのムアントン・ユナイテッド(Muangthong United)やPTTラヨーン(PTT Rayong)、オマーンのアル・ムサンナ(Al-Musannah)、ポルトガルのSCオリャネンセ(SC Olhanense)、ハンガリーではブダペスト・ホンベードFC(Budapest Honved FC)でプレーし、2015年にスロバーツコへ加入した。

「これは4度目の出来事だ。(こうした経験は)タイで1度、アフリカで2度あった」と明かしたコネは、「いや、医学を学んだことはない」と笑うと、「こうした状況では、選手が舌をのみ込んでいないか常に確認するようにしている」と語った。(c)AFP/Jan MARCHAL