【2月24日 MODE PRESS】デンマーク出身のフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマン(Nicolai Bergmann)と金沢の加賀友禅がコラボレーションした着物「加賀友禅×ニコライ・バーグマン」が東京・南青山にてお披露目された。

 箱の中に花々をびっしり敷き詰めた「フラワーボックス」をシグネチャーに、コンテンポラリーかつ斬新なフラワーデザインで知られるニコライ・バーグマン。実は彼のスタイルには、日本の伝統文化が持つ繊細さや奥行き、優美な色合わせから受けた影響が大きいという。19歳で初来日し、以前から着物のデザインを手がけたかったというバーグマンが今回、加賀友禅工房「奥田染色」とのタッグでその夢を実現させた。「北欧と和の融合」をコンセプトに掲げ、作品を作り続けてきたバーグマンの新たな取り組みについて話を聞いた。

太宰府天満宮で開催された展覧会の写真集(2017年2月15日撮影)。(c)MODE PRESS/Fuyuko Tsuji

■フラワーアーティストが一番好きな花

 今回発表されたのは、バーグマンが愛してやまないアジサイをモチーフにした豪華な打ち掛け。その美しさを再現するため何百枚もの花弁を撮影し、パターンをおこす作業が繰り返された。そして友禅職人により一つひとつ手描きで淡いニュアンスを再現している。デザインと監修のすべてを手がけたバーグマンは「自分の中ではアジサイはオランダ産の切り花というイメージがあったが、初めて鎌倉・長谷寺のアジサイを見たとき、その印象が変わった。一番好きな花は? というのはフラワーアーティストにとって一番答えにくい質問だが、やっぱり自分が日本に来て一番強い印象を受けたのはアジサイ」と語る。

 しかもそのアジサイを丸ごと柄に生かすのではなく、フラワーアーティストならではの視線で、ガクアジサイやカシワバアジサイなど様々な花弁をミックスさせた。打ち掛けと振り袖の生地は、大人っぽいピンクと上品なライトブルーの2色展開。また裏地には相性の良いグレーを使い、華やかさと渋さを併せもつ特別な一着に仕上がった。背中の襟下に彼のイニシャルである「N」と「B」をかたどった花紋が刺繍されているのも、さりげないサプライズだ。

アジサイの魅力をたっぷり詰め込んだバーグマンならではのデザイン(c) Nicolai Bergmann モデル:松尾幸実 カメラマン:鍋島徳恭 ヘアメイク:二法田サトシ 着付け:中田純子

■注目を浴びたメンズのネクタイ

 先月はメンズネクタイのライン「ブルーミング タイ by ニコライ・バーグマン(Blooming Tie by Nicolai Bergmann)」をスタートさせるなど、ファッション分野での活躍も著しい。花の魅力をあらゆる角度から引き出し、モダンなデザインに落とし込むのは彼ならではの手腕だ。「ネクタイは想像していた以上に盛り上がった。近年、人気の動向がだんだん読めなくなっていておもしろい」と本人も思わぬ反響に笑顔を見せる。すでに次のシーズンのものも制作中だが、季節ごとに異なる雰囲気が楽しめるデザインを心がけているという。

ヴィヴィッドな色合わせが斬新なメンズネクタイのファーストコレクション(c) Nicolai Bergmann

■花に永遠の命を与えるために

 これまでも「ヒューゴボス(Hugo Boss)」や「フルラ(Furla)」といったトップメゾンとのコラボレーションでも知られる。フラワーアーティストがここまで積極的にファッションの仕事に取り組むことは珍しいが、「以前からアパレルブランドのために花を活けたりする機会が多く、そこから興味を持たれてデザインにも関わらせてもらっている」とその経緯を語る。

「花の美しさは1週間から10日ほど。花を長持ちさせる方法はいろいろあるが、ファッションを通してそれを表現するのも面白いんじゃないかと思った。変な言い方になるが、一つの『枯れない』方法だと思う」。そうして生まれたオリジナルフレグランスやバッグ、腕時計には、たしかにリアルな花の美しさと生命力が息づいている。

南青山のフラッグシップストアに並ぶフレッシュな花々(2017年2月15日撮影)。(c)MODE PRESS/Fuyuko Tsuji

■なぜ花以外もデザインするのか?

 南青山のフラッグシップストア「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン(Nicolai Bergmann Flowers & Design)」にはカフェ「ニコライ バーグマン ノム(Nicolai Bergmann Nomu)」を併設。オーガニック野菜を使ったデンマークのオープンサンド「スモーブロー」などを提案している。「コアにあるのは花だが、何にでも関連性があり、インテリアも花の一部。花を飾るときにまず花瓶が必要でしょ? そしてその花瓶をテーブルやキャビネットに置く。そんな繋がりに対して、いろんな新しいことを考えるのがすごく楽しい」と、花を通したライフスタイル全般をプロデュースする理由を説明する。

ニコライ バーグマンのシグネチャーとも言える「フラワーボックス」(2017年2月15日撮影)。(c)MODE PRESS/Fuyuko Tsuji

■今しか楽しめない季節の花々

 もちろん、花の魅力を伝えたいという思いは何よりも強い。今、春の花で一番好きなのはラナンキュラス。大きさや色もさまざま、繊細な花びらが何百枚と重なり合うラナンキュラスが「ふわーっと広がっていく」様子が素晴らしいと、バーグマンは顔をほころばせる。「チューリップだったら毎日つぼみがふくらみ、茎が伸びていく。そういうのは今しか楽しめない春の花の特徴」。そう嬉しそうに語る表情は、やはりフラワーアーティストならではだ。

 日々、季節を告げる花たちに囲まれ、新たなクリエーションに取り組むバーグマン。デンマークで育ち、長年日本で暮らした感性から生まれる彼の作品には、ほかにない魅力が詰まっている。サンドイッチから加賀友禅まで、すべてが花と一体化した彼の世界観にこれからも酔いしれたい。

フラワーショップ、カフェ、フラワースクールを併設した南青山の旗艦店(2017年2月15日撮影)。(c)MODE PRESS/Fuyuko Tsuji

■お問い合わせ
ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン フラッグシップストア/03-5464-0743

■商品概要
打ち掛け・振り袖 1800,000円(全2色)
訪問着 800,000~1,200,000円(全6色)
※税抜。仕立て代込

■関連情報
・ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン 公式HP:www.nicolaibergmann.com
・ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン 公式オンラインストア: shop.nicolaibergmann.com
(c)MODE PRESS