【3月1日 AFP】イラク軍が同国北部の都市モスル(Mosul)をイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」から奪還する作戦を遂行する中、大英博物館(British Museum)で養成された考古学者らが別の闘いへの準備を進めている──モスルの遺跡救出作戦だ。

 古代イラク研究で世界屈指の機関として知られる大英博物館はこの1年間、イラクの考古学者らにハイテク技術を使って遺跡を保存したり記録したりする方法を指導してきた。

「モスルが解放されれば、モスル博物館(Museum of Mosul)を再建する壮大な計画が始動するだろう」と、イラク緊急遺跡管理要請計画(Iraq Emergency Heritage Management Training Scheme)の筆頭考古学者、セバスチャン・レイ(Sebastien Rey)氏はAFPに語った。

 ISはイラクやシリア、マリで貴重な文化遺跡を狙って破壊している。古代遺跡の町ニムルド(Nimrud)やニナワ(Nineveh)があるモスルは、歴史的に見て特に重要な都市だ。

 ISは2015年4月、ニムルドの遺跡群を破壊している動画を公開。さらに、モスル博物館の石像やニナワのローマ時代の遺跡も攻撃した。

 イラク軍は昨年10月にモスル奪還作戦を開始し、東部を制圧した後、現在は西部奪還へ向けて攻勢を強めている。

 大英博物館でのイラク人専門家の養成プログラムは昨年1月に始まり、イラク人考古学者らはロンドン(London)とイラクで3か月ずつ指導を受けた。このプログラムでは、衛星画像やデジタルマッピングの他、建造物や遺跡を記録するツールも使われている。

 考古学者らはイラクに戻った後は安全な場所で新しく学んだスキルを実践。新たな成果にもつながった。北部のクルド人自治区で、それまで知られていなかった古代の要塞(ようさい)都市が発見されたのだ。南部のシュメール王朝時代の都市テルロー(Tello)では、紀元前3世紀に造られた寺院の巨大な泥れんがの壁が見つかった。テルロー遺跡は面積約250ヘクタールと広大で、地形がモスルの遺跡と酷似しているため、考古学者たちを養成する場としても活用されている。