【2月20日 AFP】フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領が、南部のダバオ(Davao)市長時代に暗殺団を取り仕切り、この組織によってジャーナリスト1人や妊婦1人などが殺害されたと、かつてその一員だったと主張する元警察官が20日、告白した。

 著名な人権派弁護士3人が同席する中、アーサー・ラスカニャス(Arthur Lascanas)氏はドゥテルテ氏がダバオ市で自身の反対派排除や犯罪撲滅を理由に命じたとする一連の殺人を泣き崩れながら列挙した。

 ラスカニャス氏はさらに、ドゥテルテ氏に対する「盲目的忠誠心」や金銭的な報酬のために、麻薬密売に関わった実の兄弟2人も殺害したと明かした。

 ラスカニャス氏によると、「遺体を埋めたり、海に遺棄したりすると、ドゥテルテ市長から報酬が支給された」という。

 ドゥテルテ氏は、20年以上在任したダバオ市長時代に暗殺団を指揮し、大統領就任後はその手法を、何千人もの死者を出している麻薬撲滅戦争にまで拡大させたと繰り返し非難されている。

 ダバオ市の暗殺団の存在について、否定したり認めたりと一貫しないドゥテルテ氏は、警察に手本を示すため自分でも人を殺したことがあると発言している。

 ラスカニャス氏の告白のうち、最も非道な事例の一つによると、同氏は他の警察官らと共に誘拐事件の容疑者を拉致し、その妊娠7か月になる妻と4歳か5歳の息子、及び義理の息子、家政婦2人を拘束。「ドゥテルテ市長は、『行け、やつらを消せ』と合図した」「この場合は悪が勝った。彼ら(警察官ら)は私の目の前で、消音装置を付けた22口径の銃で一家全員を殺した」と振り返った。

 また2003年には、ドゥテルテ氏に批判的だった著名なラジオパーソナリティーのジュン・パラ(Jun Pala)氏を殺害し、ドゥテルテ氏はラスカニャス氏と他の警察官らに300万ペソ(約670万円)の報酬を与えたという。

 昨年には上院の公聴会で、狙撃手を自称する男性が、1000人以上を殺害したダバオ市の暗殺団を率いていたのがラスカニャス氏だと主張していた。

 当時はまだ現役の警察官だったラスカニャス氏は関与を否定していたが、昨年12月の退職後、良心の呵責(かしゃく)に苦しみ、真実を語り暗殺団の一員だったことを告白しようと思ったという。(c)AFP