【2月17日 AFP】毒物で武装した美貌の女性暗殺者は今や北朝鮮が「好んで使う武器」だ──金正男(キム・ジョンナム、Kim Jong-Nam)氏がマレーシアで殺害された事件を受けて、韓国に亡命した脱北者で著名な北朝鮮専門家の安燦一(アン・チャンイル、An Chan-Il)氏が16日、AFPに語った。

「私たちは、近付いてくる若い女性を常に警戒している」と安氏は言う。北朝鮮政府が「復讐(ふくしゅう)のために送って来た暗殺者かもしれないからだ」

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が13日にマレーシアのクアラルンプール国際空港(Kuala Lumpur International Airport)でスパイ小説のような手口で暗殺された事件について、韓国政府は北朝鮮の工作員による犯行とみている。マレーシア警察はこれまでに、女2人と男1人を逮捕している。

 北朝鮮の元軍人で1979年に韓国に亡命した安氏は現在、北朝鮮の独裁体制を厳しく批判する専門家として知られる。同氏は韓国政府から厳重な警護を受けていた脱北者8人のうちの1人だ。正男氏の殺害後、厳重警護の対象となる脱北者の数は20人に増えたと同氏は言う。

 安氏によれば、北朝鮮では近年、男性工作員が情報収集や情報提供者との関係構築の任務に就けられるケースが目立ち、「女性工作員らが毒殺の訓練を受けている」と言う。

 女性なら「プラスチック製の小さな毒物注入器を口紅などの化粧品の中、または服の中に隠しやすい」と安氏は指摘し、そのようなプラスチック製の注入器は空港のセキュリティーチェックでも見つからないと語った。

 女性工作員の候補生らは、知力と体力、出自や家族のことまで入念に調べられる。加えて、「美しい容姿が不可欠だ」と安氏は言う。

 正男氏の殺害事件を捜査中のマレーシア警察は、それぞれインドネシアとベトナムのパスポートを所持する女2人を容疑者として逮捕した。2人は事件の2日後に殺害現場の空港に再び姿を現していた。

 安氏はこの行動について、北朝鮮の工作員にしては「おかしい」と指摘し、「北朝鮮の工作員なら(殺害後に)姿を消すか、逮捕されそうになった段階で自殺を図っているはずだ」「スパイとしては考えられない行動だ」と語った。(c)AFP/Park Chan-Kyong