■反移民政党にそっぽ

 地中海(Mediterranean Sea)に面するシリアの都市ラタキア(Latakia)から逃れてきたムスタファ(Mustafa)さん(30)とバスマ(Basma)さん(28)夫妻は、レイキャビク郊外の住宅地に住んでいる。

 ムスタファさんは、アイスランドでも「人種差別主義者」に出くわすことはあるが、他の国々よりも少ないと言う。

 アイスランドではシリア難民が到着し始めた2016年初頭に、反移民を掲げる政党「アイスランド国民戦線(Icelandic National Front)」が設立された。しかし、これまでのところ支持は広がっていない。

 昨年10月に行われた総選挙で国民戦線の得票率はわずか0.2%。国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)が昨年9月に実施した調査では、難民の受け入れ拡大を支持する国民が85%超に達した。

 ムスタファさんとバスマさんにとって、アイスランドはほとんど未知の国だったという。ヒジャブで髪を覆ったバスマさんは「私たちはここに来るまで、アイスランドのことなんて聞いたこともありませんでした。どんな場所なのかほとんど知りませんでした」と話す。

 ただ、ムスタファさんが仕事を見つけるのは簡単ではなかった。シリアではタクシーの運転手や自動車修理工、料理人、塗装業者、電気工として働いたことがあるムスタファさんだが、アイスランド語も英語も話せないからだ。それでも、レイキャビク中心部にある中東料理店になんとか職を見つけた。

 妻のバスマさんは第一子となる男の子を妊娠しており、近く出産予定だ。バスマさんは「息子がこの美しい国で、安全に生まれてきてくれることを誇らしく思う」と目を輝かせる。

 アイスランドでは昨年、791人が難民認定を申請し、その大半がバルカン(Balkan)半島諸国の出身者だった。しかし、そのうち申請を受理されたのはイラク人25人、シリア人17人、イラン人14人を含む100人にとどまっている。(c)AFP/Jérémie RICHARD