【2月7日 AFP】アフリカ、中東、アジアの一部の国で行われている、少女や若い女性の性器を切除する儀式的な行為をめぐっては世界的な非難を集めているが、6日に発表された論文は、文化的には理にかなったロジックをたどったものでもあると主張している。

 論文の執筆者らは、こうしたロジックを理解することで、女性器切除を2030年までに世界中から撲滅するという国連(UN)の目標達成に近づける可能性があるとしている。なお、その論理は「生物学的」ではなくあくまで「文化的」であると説明された。

 米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に掲載された論文によると、アフリカ西部5か国47部族の比較調査では、女性器切除が規範となっているグループでは、切除を受けた女性の子どもたちに高い生存率がみられた。その一方で、女性器切除が決まりではなく例外的とされるグループの間では、切除を受けていない女性の子どもたちの方が生存率は高かった。

 論文は、15~49歳の女性6万1000人以上を対象に実施された健康についてのアンケート調査を基にしている。

 論文の主執筆者で英ブリストル大学(University of Bristol)研究員のジャネット・ハワード(Janet Howard)氏は、「今回の結果は、こうした相違が生物学的ではなく社会学的な原因で生じていることを示している」と指摘。自集団の文化で決まりとなっているこの行為を受け入れる女性は、一般的により良い結婚機会を得ることができ、また社会的ネットワークにも参加しやすいとAFPに説明した。

 ハワード氏と同僚のムハイリ・ギブソン(Mhairi Gibson)氏は、研究に着手した理由について、多額の資金が投じられ、注目も集まっている女性器切除撲滅キャンペーンがなかなか成功しない理由を把握したかったとしている。

 米ニューヨーク(New York)州ビンガムトン大学(Binghamton University)の生物人類学者キャサリン・ワンダー(Katherine Wander)氏は、両氏の論文について、「文化的な進化」と呼ばれる新たな文脈からこの行為を考え直すことにより、切除によって得られる優位性は、心身の健康への犠牲を上回る可能性があることを示唆していると述べ、「女性器切除が女性の出産率を高めているようだ」と付け加えた。

 同氏は、こうしたロジックは、少女たちを守ろうと活動している人たちを失望させるものであるかもしれないと前置きした上で、「いずれにしても、女性器切除をこうした観点から理解することで、介入には『費用と便益のバランス』という新たな指針が必要であることがわかる」と説明した。(c)AFP/Marlowe HOOD