■「私たちの息子は永遠に失われた」

 被害者家族たちに共通しているのは無力感だ。被害少年のほとんどは自宅やアヘン農場、遊び場などから白昼堂々拉致されたという。少年たちは警察の検問所を転々と移動させられるので、その行方を追うことは難しい。

 警官らは、少年たちを屋外に連れ出すことがある。周囲に「自慢」するためだ。その時に運よく拉致された息子を見つけられたとしても、助けることができずに打ちひしがれる保護者もいる。

 バチャ・バジで息子が拉致されたというサルダワリさんもその一人だ。サルダワリさんは、数か月にわたって息子を捜し続けたが、どうしても見つけることができないでいた。そんな中、ヘルマンド州ゲレシュク(Gereshk)の市場の人混みでようやく息子の姿を見かけた。きょうだいと遊ぶことが何よりも大好きだったというきゃしゃな息子は、美しい刺しゅうが施されたチュニックシャツと、宝石飾りの付いた帽子を身に着けていた。

 サルダワリさんは、息子に手を伸ばして抱きしめてしまいたい衝動にかられた。だが、息子を取り囲んでいた警官たちの中に入っていく勇気はなかった。

「息子の姿が遠くへ消えていくのを見ていた」「妻は悲しみでおかしくなっている。『私たちの息子は永遠に失われた』と泣いてばかりいる」とサルダワリさんは話した。

 子どもを性奴隷にされた親の苦悩は尽きない。警官らは少年たちを服従させるためにアヘン漬けにするだけでなく、タリバンとの戦いで警官の犠牲者が急増している危険な地域に少年たちを送ることもある。タリバンが警察の検問所を襲撃した際に、その場に居合わせた少年が殺されたという事件も実際にあった。

 親の不安は募るばかりだが、つらいのは自分たちだけではないと皮肉な現実に慰めを見いだす家族もいる。性奴隷にされた少年たちの多くは、ひげが生え始めると捨てられる。そのため、村はバチャ・バジの被害者であふれているのだ。(c)AFP/Anuj CHOPRA