北朝鮮の知られざる美術工房、国連と米国のブラックリスト入り
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■実質的な統括者は金正恩氏の妹
カーン氏の像は、万寿台が国外で手掛けてきた数百万ドル規模の記念碑制作プロジェクトと比較すれば、大きさと価格の面では微々たるものだ。万寿台が携わったプロジェクトの中には、2010年にセネガルの首都ダカール(Dakar)郊外に建立された高さ50メートルの「アフリカ・ルネサンスの像(African Renaissance Monument)」もある。
北朝鮮への制裁をめぐる国連の決議案が採択された翌日、米財務省は、「万寿台国外事業(MOP)」を「北朝鮮の違法行為を支援」する事業団体として「ブラックリスト」に追加した。
万寿台に関する権限は宣伝部トップの金起南(Kim Ki-Nam)氏に与えられているが、ウェブサイト「北朝鮮リーダーシップ・ウオッチ(North Korea Leadership Watch)」を運営しているマイケル・マッデン(Michael Madden)氏によると、収益を上げている万寿台に同国の最高権力者、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長も特別に目をかけているという。
「勤労請負業者と輸出会社としては突出した存在であることから、実質的に統括しているのは正恩氏の妹の金与正(キム・ヨジョン、Kim Yo-Jong)氏だ」とマッデン氏は指摘する。宣伝扇動部の副部長を務める与正氏は、大きな影響力を持つと専門家らにみなされている現在の地位まで異例の昇進を遂げてきた。与正氏は今月、北朝鮮政府による弾圧に関与したとして、米財務省から制裁対象に加えられたばかりだ。
MOPの収益に関する詳細は明らかにされていないが、同事業団体がもたらす外貨は年間推定500万~1300万ドル(約6億~15億円)。
「収益という観点で言えば、かなり小規模だ」とマッデン氏。「だが『最上位の』支援を受けていることは言うまでもないが、その存在意義と有名な団体であることから、売上高を伸ばすのに苦労はしていない」という。