【1月30日 AFP】米大統領に就任したドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が署名した入国禁止の大統領令について、英陸上界の英雄で、五輪で2種目連覇を達成しているモハメド・ファラー(Mohammed Farah)も反対の声を上げている。

 ソマリアで生まれたファラーは、8歳のときに英国へ移住。現在は米オレゴン(Oregon)州に拠点を置きながら活動を行っており、年初には英スポーツ界への貢献を評価され、女王からナイトの爵位を授与された。

 トランプ新大統領は27日、ソマリアを含めたイスラム教国7か国からの入国を禁止する大統領令に署名。エチオピアで合宿中のファラーは、自身が入国禁止の対象とならなかったことに「安心」しつつ、政策の影響を受けることへの不安を口にし、自身のフェイスブック(Facebook)に次のようなメッセージを投稿した。

「私は本年1月1日、女王陛下から騎士の地位を賜りました。しかし1月27日、ドナルド・トランプ大統領はどうやら私をのけ者にしたようです」

「私は英国市民であり、米国には6年にわたって居住しています。この場所で練習に励み、社会に貢献し、税金を払い、4人の子供を育て、子供たちは今ではそこを故郷と呼んでいます」

「それが今、私や私と似た境遇の人たちが、この国では歓迎されないかもしれないというのです。パパは家へ帰れないかもしれないと子供たちに伝え、大統領が無知と偏見に根ざした政策を導入した理由を説明しなくてはならないのは、とてもつらいことです」

 このファラーの投稿から数時間後、大統領令は当該の7か国、つまりイラク、イラン、リビア、ソマリア、シリア、イエメン、スーダンから直接に米国へ入国したのでない限り、英国籍、または英国との二重国籍を持つ人間には適用されないとの言質が取れたことを、英国政府が発表した。

 英外務省の助言を受けて、ファラーの広報担当者も声明を発表。大統領令が自身に適用されないことを知り、ファラーが「安心している」と話した。

「合宿が終わったら家族の待つ場所に帰れることがわかり、モー(ファラー)は安心している。それでも、先の声明で本人が語っているように、分断を助長するような今回の極めて差別的な政策に、絶対に賛同できないという彼の姿勢は変わらない」

 英国では30日、入国禁止令に抗議する活動が全土で予定されている。また、トランプ大統領のロンドン(London)訪問に反対するオンラインの嘆願書には、すでに80万人以上の署名が集まっている。(c)AFP