【1月30日 AFP】米アカデミー賞(Academy Awards)受賞歴のあるイランのアスガー・ファルハディ(Asghar Farhadi)監督が29日、来月予定されている同賞授賞式への欠席を発表した。同氏は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領のイスラム諸国7か国に対する入国禁止措置を、自国の強硬主義者らの行動とも比較・批判した。

 映画『セールスマン(The Salesman)』でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされているファルハディ氏は、AFPに寄せた声明で、当初は授賞式に出席するつもりだったが、考えを変えざるをえなくなったと明かした。声明は、米ロサンゼルス(Los Angeles)の代理人を通じて出された。

 トランプ氏は27日、イランやイラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンの7か国に対し、米国への入国を禁じる大統領令に署名している。これらの国は、イスラム教徒が国民の大多数を占める。

 ファルハディ氏は、「私はこれまで、抗議の意を示すために授賞式をボイコットしたり、欠席したりするつもりはなかった。なぜなら、米国の映画業界や同賞を主催する映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences)の大半が、かつてないほど高まりをみせている狂信や過激思想に反対しているからだ」と述べた。そして、たとえ入国が例外的に認められたとしても、それを素直に受け入れることは難しいとの見解を示した。

 さらに同氏は、米国やイランの強硬派が同じ物の考え方で行動していると指摘。強硬派グループは長年、さまざまな国や文化についての非現実的で恐ろしいイメージを国民に植え付け、相違を拒絶へ、拒絶を憎しみへ、憎しみを恐怖へ変えようとしてきたと批判した。

 米ロサンゼルスで毎年開催されているアカデミー賞授賞式をめぐっては、同映画に主演したイラン人女優タラネ・アリシュスティ(Taraneh Alidoosti)さんも、トランプ氏による「人種差別的な」入国制限を理由に出席をボイコットするとすでに発表している。

 ファルハディ監督は2012年に『別離(A Separation)』で外国語映画賞を受賞している。(c)AFP