■生きたまま食べられた子どもたち

 最初の実験では野生のハムスターを2つのグループに分け、一方には主に小麦の餌を、他方には主にトウモロコシの餌を与えて比較した。どちらも同時にクローバーや地虫なども食べていた。二つの食事内容には基本的な栄養価の違いはなく、生まれた子どもの数もほとんど変わらなかった。

 しかし子どもの生存率に劇的な違いがみられた。小麦とクローバー、または小麦と虫を食べていた雌のハムスターの子どもは5分の4が離乳に至った。しかしトウモロコシを食べていた母ハムスターの子で離乳に至ったのはわずか5%だった。

 さらにトウモロコシを食べていたハムスターの子どもたちの死に方が衝撃的だった。研究チームは「雌のハムスターたちはトウモロコシが入っていた餌箱に子どもたちを入れておいて、その子どもたちを食べてしまった。その時点で子どものハムスターたちはまだ生きていた」と報告した。

 自分たちの子どもを食べてしまった雌のハムスターたちには他の異常行動の兆候もみられた。研究者らが実験室へ入っていくと、通常はかわいらしいハムスターたちがぐるぐると走り回り「餌箱に登ったり餌箱を叩いたりしていた」という。

 またこの雌のハムスターたちの舌は黒くはれ上がり、血液の粘度は採血するのが難しくなるほど高くなった。