■労働力の「安売り」懸念も

 また被雇用者組合の全国連合に当たる「フィンランド労働組合中央組織(SAK)」は、労働力の「安売り」を懸念する。

 ヤルコ・エロランタ(Jarkko Eloranta)会長は、「適切な賃金が支払われず、被雇用者の生活が部分的に社会保障によって賄われるような労働市場を、われわれは支持しない。それは事実上、企業への助成になるからだ」と批判する。

 ユーロ圏に加盟しているフィンランドは、3年に及んだ不況を2015年に脱却し、その後緩やかな回復基調にあるものの、失業率は今も8.7%と比較的高い。さらに大きく懸念されるのが、失業者の3人に1人が1年以上失業状態にあるという点だ。

 ユニバーサル・ベーシックインカム制度では、失業者は収入があった場合も失業保険事務所へ報告する義務がなくなり、その手続きにまつわる煩雑さは軽減される。これが全国に適用されれば、全国民が自動的にユニバーサル・ベーシックインカムを受給することになるが、相応の給与を得ている人々は、税金としてその分を納付し直すという形になるという見方が大勢だ。

 欠点は別にしても、フィンランドでの実験は欧州内で先駆けとなる。また英スコットランド(Scotland)やカナダのオンタリオ(Ontario)州も、ユニバーサル・ベーシックインカムの試験導入を検討している。(c)AFP/Anne KAURANEN