■同盟国が覚える不安

 外交面では世界の超大国としての地位を維持することが仕事となる。オバマ政権では、シリア内戦に対するロシアの介入が米国の足かせとなってきた。ロシアはアフガニスタンやリビアにも関与する姿勢を見せており、良好な対ロ関係を築きたいトランプ氏とっては頭痛のタネになりかねない。

 中国に対しては、トランプ氏は強気な姿勢で臨んでいるが、一方の中国は近年、習近平(Xi Jinping)国家主席の下で、外交や軍事面で存在感を増している。トランプ氏と習氏の野心がぶつかれば、台湾や為替の問題から南シナ海(South China Sea)の問題まで、さまざまな対立の火種を生む恐れがある。

 それでも、トランプ大統領の誕生に最も大きな不安を抱いているのは同盟国だろう。北大西洋条約機構(NATO)の存在意義やアジア地域における安全保障条約について、トランプ氏がこれまでに疑問を呈しているためだ。

 米ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のトーマス・ライト(Thomas Wright)氏は、「トランプ氏は米国が他国を防衛する必要がなければいいと思っている。守る必要があるなら、防衛費を最大限払ってもらいたいという考えだ」と指摘する。

 現時点で、英国や日本を含めほとんどの同盟国は、トランプ氏と親密な関係を築くことを前提としたアプローチを採っている。

■想定される安全保障上の問題

 歴代のどの米大統領も国を揺るがすような安全保障上の問題に直面するが、トランプ氏の場合はおそらく北朝鮮の核開発問題がこれに当たるだろう。

 今のところ、北朝鮮に対する経済制裁の効果は限定的だ。しかし、トランプ氏の中国に対する強気のスタンスもあるため、米国が対北朝鮮政策で中国政府の協力を得ることは難しいと考えられる。一方で、北朝鮮の核を無力化するため、サイバー攻撃や空爆といったより踏み込んだ作戦に踏み切る可能性もある。

 米国社会科学研究評議会(Social Science Research Council)のレオン・シーガル(Leon Sigal)氏は、「トランプ氏は(敵の攻撃による将来的なリスクを防ぐ)予防戦争を始める時が来たというサイレンを聞くかもしれない」と話す。

 しかし、それは一方で、米国の情報機関を信用することを意味するとしながら、「大統領選の最中に、米国による他国への軍事介入について繰り返し批判し、同盟関係に懐疑的だった大統領にとって、(軍事攻撃という)選択肢はとりわけ受け入れ難いだろう」と指摘した。(c)AFP/Andrew BEATTY