【12月30日 AFP】ボクシングの元世界王者、リッキー・ハットン(Ricky Hatton)氏が、キャリアを終えたあと、リング外の世界に適応するのに苦しんでいる元ボクサーたちへの支援を求めた。

 38歳のハットン氏は、英国で屈指の人気を誇ったボクサーで、スーパーライト級とウエルター級の2階級で世界王者になった。

 しかし、2009年5月のマニー・パッキャオ(Manny Pacquiao)戦で完敗を喫すると、ハットン氏はうつ病を発症。「数度」自らの命を絶とうとしたと明かした。

 英BBCのラジオ4に対してハットン氏は、「ボクサーたちにはより多くのことが成されるべきだ。サッカー選手には気を配ってくれる代理人がいて、選手にはクラブの後ろ盾がある。翻ってボクサーは、現役が終わってしまった途端『ではまた』という感じで、新しいチャンピオンに話題が移ってしまう」と語った。

「自分たちボクサーは、ケンブリッジ大(Cambridge University)だとか、そんなところを出ているわけじゃない。公営団地の出さ。もしボクシング界にプロ協会のようなものがあれば、より良い場所になると思う」

「多くのボクサーに(問題が)起きているように思う。個人スポーツだから、リングにも一人で上がり、引退したら自分の残りの人生を一人で歩んでいく傾向がある」

 ハットン氏と同じ英国人ボクサーのタイソン・フューリー(Tyson Fury)は、うつ病を抑えようとコカインに手を出し、今年10月に二つの世界ヘビー級王座を剥奪された。また、同国出身の元世界ヘビー級王者フランク・ブルーノ(Frank Bruno)氏もうつに苦しんでいる。

 ハットン氏は、同じマンチェスター(Manchester)出身のフューリーと連絡を取ろうとしたものの、返事はなかったと明かした。

「タイソンはかなり込み入った人間だ。彼が告白したときは、胸がはち切れそうだった。彼の環境が良くなく、うつにかかっているのなら、彼には正しい人に話をしてもらって、適切な形で片を付けてもらいたい」

 ハットン氏はコカインの使用を認めて2010年にボクシングライセンスを剥奪され、翌年に引退。2012年に一時現役復帰した後、再度引退して現在はプロモーターとトレーナーを務めている。

「何回か自殺しようとした。前は、パブから帰ってきて、ナイフを出して、暗い部屋の中で座って、狂ったように泣いていた」 (c)AFP