【12月27日 AFP】25日に53歳の若さで死去したポップ界のスーパースター、ジョージ・マイケル(George Michael)さんは、自身が同性愛者であることや恋人の死について長年沈黙を守った後、同性愛者の人権活動やHIV(ヒト免疫不全ウイルス)撲滅キャンペーンの重要な支援者となるなどの活動を行ってきた。

 マイケルさんがゲイであることを公表したのは、歌手としてのキャリアをスタートさせてから20年近く経った1998年のこと。米ロサンゼルス(Los Angeles)の公園の公衆トイレで「わいせつな行為」を行っているところを警察に現行犯逮捕されたことがきっかけだった。

 芸能界ではそれまで、マイケルさんの性的指向は、表向きは秘密とされながらも広く知られていた。マイケルさんは2007年に英BBCラジオのインタビューで、公表しなかった理由について、当時ゲイ社会を脅かしていたAIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)ウイルスのことで母親を心配させたくなかったからだと説明した。

「私が家族をどれほど愛しているかわかって欲しい。1980年代から1990年代初めにかけて、親にとっては同性愛といえばエイズというのが圧倒的な考え方だった」と語っている。

 同性愛者の人権擁護活動を行っているピーター・タッチェル(Peter Tatchell)氏は、「ニューズ・オブ・ザ・ワールド(News of the World)」や「サン(The Sun)」など同国のタブロイド紙が当時、同性愛者であることを醜聞や恥とみなして意地悪く書き立てたことも背景にあったと説明している。

 タッチェル氏は、同性愛者らを標的とした攻撃や殺人が急増し、彼らにとっては恐怖に満ちた時代だったが、有名人であればなおさらその恐怖は大きかっただろうと指摘し、「当時ジョージが公表してくれていれば、こうした偏見の波に立ち向かう力になれただろうにと思う。でも、彼がそうしなかったことは理解できる」と語った。