■暴力反対の歌詞

 ミャンマーは民政移管の翌年の2012年、検閲を正式に廃止した。表現の自由が花開き、昨年の総選挙では多くのミュージシャンがスー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)への支持を表明した。

 現在でもミャンマーのヘビーメタルバンドはセックスに関する歌詞を避けているし、死について歌うことも同国ではタブーとされている。その代わり、彼らは表現の自由を武器にして社会的・政治的変革を推し進めようとしている。

「新しいアルバムでは主にこの国の政治について書いた」と、バンド「ラスト・デイズ・オブ・ベートーベン(Last Days of Beethoven)」のギタリスト、ポエ・ゾウ(Phoe Zaw)さん(32)は言う。「私たちは、ラカイン(Rakhine)州でのイスラム教徒と仏教徒への暴力、他州での少数民族に対する暴力に反対する歌詞を書いた」

 それでも、ヘビーメタルはこの国でいまだニッチなジャンルだ。軍政が終わるとともにバンドの数は増えた。だが人口5000万人以上のこの国でヘビーメタルバンドの数は最大都市ヤンゴン(Yangon)で数十程度。それ以外の地域には数えるほどしかない。「ここでは1年に数えるほどしかライブが開催されていない」とポエ・ゾウさんは言う。

 とはいえ、この数年はソーシャルメディアの普及でヘビーメタルバンドにもスポットライトが当たるようになってきた。カフェや街中でCDを配るのではなく曲をソーシャルメディアに投稿すれば、ファンたちは正式なリリース前に試聴したり共有したりできる。

 ナイトメア・メタル・バンド(Nightmare Metal Band)のアウン・ミョー・リン(Aung Myo Linn)さんは「テクノロジーやインターネットのおかげで、アルバムを制作できなくてもフェイスブック(Facebook)やユーチューブ(YouTube)などのソーシャルメディアを使って曲をシェアできるようになった」と語った。(c)AFP/Athens ZAW ZAW