【12月23日 AFP】幼体から成体に成長すると歯を失う、現在知られている限りで初の恐竜種を発見したとの研究論文を中国の研究チームが22日、発表した。鳥にくちばしがある理由の説明となる可能性のある発見だという。

 今回の研究は、リムサウルス(学名:Limusaurus inextricabilis)として知られる小型できゃしゃな恐竜の化石に基づいている。リムサウルスは、現生鳥類の祖先である獣脚類恐竜の仲間だ。

 米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された論文によると、リムサウルスは、肉食の幼体から、植物を常食としたと考えられる、くちばしを持つ成体に変態した可能性が高いという。

 論文の主執筆者で、中国・首都師範大学(Capital Normal University)の王●(火へんに樂、Shuo Wang)氏は、極めてまれで非常に興味深い現象を発見としながら「若い個体の歯のある顎が、発達段階でより成熟した個体の完全に歯のない、くちばし状の顎に変化する」とその内容を説明した。

 今回の成果は、ケラトサウルス属の獣脚類恐竜13個体の化石分析に基づくものだ。化石は、中国北西部にあるジュラ紀後期の石樹溝(Shishugou)層で収集された。

 研究チームは、これらの化石を用いて、恐竜のふ化したばかりの幼体から10歳までの成長を再現することができた。

「当初は、五彩湾(Wucaiwan)地域から、歯のあるものとないものの、2種類の異なるケラトサウルス属の恐竜を発見したと考え、個別に分析を始めてさえいた」と王氏は述べた。

 だがその後、研究チームは、それらの化石が歯以外は非常によく似ていることに気付き、最終的に、化石標本はすべて同種で、一部が歯を持つ幼体であるとの結論に達した。

 論文の共同執筆者で、米ジョージ・ワシントン大学(George Washington University)のジェームズ・クラーク(James Clark)教授(生物学)は「今回の発見は、2点の理由から重要だ」と指摘する。「一つは、恐竜の幼体から成体までの連続的な成長を確認できることが非常にまれである点。もう一つは、生体構造のこの非常に劇的な変化が、リムサウルスの食性に、幼生期から成体期に至るまでに大きな変化が起きたことを示唆している点だ」

 食性変化の説については、化石化した骨の化学組成による裏付けが得られている。そして、このプロセスは、「獣脚類が、幼体から成体への発達段階における当初の変化を通じて歯を失っていったこと」を説明する上で助けになる可能性があると、論文は続けている。

 現代の魚や両生類では、こうした歯の喪失が広く見られる。くちばしを持つ哺乳類のカモノハシも同様に歯を失う。

 研究チームによると、リムサウルスが歯を失うことの発見は、化石記録では初であり、爬虫(はちゅう)類でも初だという。(c)AFP