【12月23日 AFP】イラク北部の要衝都市モスル(Mosul)をイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」から奪還する軍事作戦をめぐり、環境破壊や健康被害といった「負の遺産」が今後、地元住民に長期的なリスクをもたらすとの懸念が指摘されている。

 モスルはISにとってイラク国内最後の主要拠点だ。10月から展開されている大規模なモスル奪還作戦では、ISが同市南部の油井や硫黄工場に放火し、地域の住民は既にその代償を支払わされている。

 国連(UN)が発表したモスル一帯の環境・健康リスクに関する報告書によれば、「数百人が化学物質にさらされて治療を受けた。また、炎上する油井から生じる煤煙(ばいえん)とガスで、数百万人に影響が出ている」という。

 空爆や砲撃で損壊した家屋やビルも、自宅に帰還して生活を再建しようとする住民たちに危険を及ぼす。「建物のがれきには、有害物質やセメントの粉末、生活廃棄物、化学物質などが含まれており、民間人や、がれきを処理する作業員らを危険にさらす恐れがある」と、国連の報告書は指摘している。

 さらに、弾薬庫や武器庫を破壊すれば「有毒物質が環境負荷をもたらす」と報告書は述べ、「戦車や装甲車などの軍用物資には、さまざまな有毒物質が含まれている場合が多い」としている。

 一方、国連環境計画(UNEP)のエリック・ソルハイム(Eric Solheim)事務局長は、「水源に遺体や危険物質、石油が投棄されているとの報告があり、重要な懸念材料となっている」と述べ、紛争に関連して起きる水質汚染も問題となり得ると指摘している。(c)AFP/Maya Gebeily