【12月22日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)で、夫を殺害した罪で26歳の女性に死刑判決が言い渡された。パレスチナ自治地区で女性に死刑判決が下されたのは20年ぶりだが、裁判は非公開で行われたうえ、女性の家族も報復を恐れて沈黙を貫いていることから、人権活動団体などはこの判決に疑問を呈している。

 死刑判決を受けた女性は「ナフラ・A」さん。ガザ司法当局によるとナフラさんは今年1月、自宅があるガザ南部ハンユニス(Khan Yunis)から近郊に出かけようと夫に持ち掛け、その路上で用を足していた夫の背中を、あらかじめ購入しておいた刃物で何度も刺して殺害したとして同月31日に逮捕され、非公開裁判を経て10月5日に有罪判決が言い渡された。司法当局はナフラさんが罪を認め、殺害が計画的だったことを示す証人らによる証言も得られたと主張している。

 だがガザを拠点とする弁護士らによる女性権利保護NGO「CWLRC(Centre for Women's Legal Research and Consulting)」がこの判決を問題視し、ナフラさんの支援に立ち上がった。

■上訴に希望を託す

 2008年以降3度の紛争に見舞われ、イスラエルによる封鎖が10年間も続くガザ地区は現在、イスラム原理主義組織ハマス(Hamas)の実効支配下にある。根強い伝統的な価値観やハマスが厳格な規制を敷くなかで、CWLRCや人権活動家たちはナフラさんの絞首刑執行を阻止しようと活動している。

 ナフラさんの弁護人を務めるバクール・トルクマニ(Bakr Torkmani)氏によれば、現在幼い息子の母であるナフラさんは、望まない結婚を強要されて生活は困窮を極め、日常的に夫から殴打されていた。トルクマニ氏は「判事らが性急に下した死刑判決」が世論やメディア報道の力によって変わることを期待している。

 だがナフラさんの裁判をめぐっては沈黙の壁という障害が立ちはだかる。CWLRCのザイナブ・ゴーニミ(Zeinab Al-Ghounimi)氏は、ナフラさんの家族は夫側の家族からの報復を恐れてナフラさんのための弁護士要請を断ったと明かした。このためCWLRCがナフラさんの弁護に介入したという。

「パレスチナ人権センター(PCHR)」のハムディ・シャクラ(Hamdi Shaqura)氏によれば、パレスチナ自治区で女性に死刑が宣告されたのは1994年以降、ナフラさんが初めて。シャクラ氏は上訴の可能性はまだあるとして「今後下されるであろう判決に希望を託している」と語った。