【12月19日 AFP】2016年1月、英歌手デヴィッド・ボウイ(David Bowie)さんがリリースした「★(ブラックスター、Blackstar)」は、その長いキャリアの中においても、最も高い評価を得る1枚となり、ロック界の伝説的存在のほとばしる新たな創造エネルギーに満ち溢れていた──。そして同作品のリリースから2日後、ボウイさんはがんのために死去した。がんを患っていたことは公表されていなかったため、多くにとっては突然の死となった。

 ボウイさんの死去から3か月後、今度はポップ界を代表する米ミュージシャンのプリンス(Prince)さんが急死した。プリンスさんは、最後のコンサートツアーの中でボウイさんの名曲「ヒーローズ(Heroes)」をカバーしていた。鎮痛剤の過剰摂取が死因とされている。

 2016年後半には、カナダ人シンガー・ソングライターで詩人のレナード・コーエン(Leonard Cohen)さんが死去した。その数週間前にアルバム「You Want It Darker」をリリースしたばかりだった。キャリアを通して人の内面や倫理に向かい続けてきたコーエンさんだが、アルバムの不吉なタイトルは、その死を示唆していたかのようだった。

 今年は、政治の世界で大きな動きがみられたが、音楽界にとっても、重要なミュージシャンらが次々と他界してしまうなど、大きなターニングポイントとなった。

 それを象徴するもう一つの出来事は、米歌手ボブ・ディラン(Bob Dylan)さんがノーベル文学賞(Nobel Prize in Literature)を受賞したことだろう。選考委員会は、ロックを文学的カノンの一部と認め、同氏の楽曲について「新たな詩的表現」と称賛した。

 ロックの時代の終焉を感じさせるもう一つのものに、今年10月に米カリフォルニア(California)州で開催された音楽フェスティバル「Desert Trip」の存在がある。この音楽の祭典は、今後その歴史において商業的に最も成功したイベントとして名を残すことになるだろう。

「Desert Trip」では、英ロックバンド「ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)」やポール・マッカートニー(Paul McCartney)さん、そしてディランさんのステージを目当てに、通常のロックコンサートよりも年上ファンたちが多く集まった。イベントには、この年代のミュージシャンたちの演奏を、今後どれだけ見ることができるのだろうといった雰囲気も見え隠れしていた。

 2016年に死去したミュージシャンには、米バンド「アース・ウインド&ファイアー(Earth, Wind and Fire)」のモーリス・ホワイト(Maurice White)さんや米ロックバンド「イーグルス(The Eagles)」のグレン・フライ(Glenn Frey)さん、米カントリー歌手のマール・ハガード(Merle Haggard)さん、英ロックバンド「エマーソン、レイク・アンド・パーマー(Emerson, Lake & PalmerELP)」のグレッグ・レイク(Greg Lake)さんとキース・エマーソン(Keith Emerson)さん、米ロックバンド「ジェファーソン・エアプレイン(Jefferson Airplane)」のポール・カントナー(Paul Kantner)さん、米ヒップホップグループ「ア・トライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)」のファイフ・ドーグ(Phife Dawg)さんらがいる。(c)AFP/Shaun TANDON