【12月18日 AFP】ポーランドの政治危機がこの週末、新たな段階に入った。首都ワルシャワ(Warsaw)では17日、数千人が新たな抗議デモを行い、ポーランド国旗を振り、エアホーン(空気警音器)を鳴らして、「ポーランドの破壊をやめろ!」と叫んだ。

 デモ参加者らは厳重な警備が敷かれた議事堂に向かって行進。愛国主義的な理念を掲げる与党「法と正義(PiS)」と、議会報道の規制強化をはじめとする政策に怒りの声を上げた。

 同国では人工妊娠中絶法の引き締めから憲法裁判所の意思決定に関する規則の変更に至るさまざまな政策が論争を呼び、政治危機を引き起こしている。

 議会報道の規制強化への野党の怒りは16日に頂点に達し、議員数十人が議事堂の本会議場を占拠。野党の姿勢を支持する数千人が議事堂前でデモ行進した。

 審議は中断を余儀なくされたが、数時間後に別の部屋で再開され、2017年の予算案は可決された。野党は採決は違法だと批判したが、定足数は満たしていた。

 与党の報道規制案は、議会の記者席に入る人数を1社当たり2人に制限し、記者席からの写真や動画の撮影を禁じる内容。実施されれば報道機関は欠席した議員の代わりにするなどの規則違反を犯した議員を撮影できなくなる。

 与党は規制案を議員と記者双方にとって快適な労働環境を目指すものだとしている。与党のアルカディウシュ・ムラルチク(Arkadiusz Mularczyk)議員は以前、「それ(報道規制案)は透明性を損なうことを意図したものでは断じてない」と述べていた。

 主要野党各党は17日、予算案の議決について調査を求めていくと発表。一方で議場を占拠した数十人の議員は、来週まで議場にとどまるとしている。

 元ポーランド首相である欧州理事会(European Council)のドナルド・トゥスク(Donald Tusk)常任議長(EU大統領)はワルシャワで開催された式典で、「憲法の原則や価値観はもちろん、人々も」尊重するようポーランド政府に呼び掛けた。

 約1年前に「法と正義」が政権について以来この闘いは続いているが、最新の世論調査によると与党の支持率は約35%となっており、主要野党2党の支持率合わせた数字を上回っている。

 政府が支持されている一因として、最重要プロジェクトの子ども手当プログラムが挙げられる。このプログラムでは第2子以降の子ども1人につき毎月500ズロチ(約1万4000円)が支給される。(c)AFP