【12月8日 AFP】イタリア・ミラノ(Milan)のスカラ座(La Scala)で8日、2016~17シーズンの幕開けとして、1904年に物議を醸した初演版のオペラ「蝶々夫人(Madame Butterfly)」が上演された。初演版の再演は112年ぶり。

「蝶々夫人」は、米劇作家デービッド・ベラスコ(David Belasco)の戯曲を基にジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini)が作曲した日本が舞台の悲劇で、1904年2月17日にスカラ座で初演された。だが上演中も観客の間からブーイングややじが鳴りやまず、1階席では乱闘騒ぎまで発生。初演は散々な結果に終わった。

 スカラ座の最高経営責任者(CEO)兼芸術監督のアレクサンダー・ペレイラ(Alexander Pereira)氏も、初演版の上演は「大論争になった」と語る。「主役の女性歌手が観客の目前で切腹自殺するようなオペラは、当時はまだ受け入れられなかったのです」

 大衆の反発や批評家たちの激しい攻撃に打ちのめされたプッチーニは、初演版の上演を1回きりでやめてしまった。

 それから3か月後、構成を2幕から3幕に変えるなどプッチーニが大幅な書き直しを行った「蝶々夫人」が再びイタリア北部ブレシア(Brescia)で上演され、こちらは大成功を収めた。こうして改訂版の「蝶々夫人」は世界を席巻し、最も有名な人気オペラの一つとしての地位を確立。その地位は現在も不動だ。

 その一方で、失敗に終わった初演から100年以上を経た8日、現代の観客はオリジナル版の「蝶々夫人」を熱狂的に歓迎。この上演は国営イタリア放送協会(RAI)で生中継された他、世界各国のラジオでも同時放送された。またミラノ市内の劇場や博物館、さらには刑務所でもライブビューイングが行われた。(c)AFP/Celine CORNU