【12月6日 AFP】シリアで続く紛争と難民の流出が原因で、水利用と農地の使用状況に大きな変化が生じているとの研究結果が5日、発表された。この種の調査としては初となる人工衛星データの分析に基づく結果だという。

 米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された研究論文によると、かんがいが行われている農地は、2013~2015年で47%減少したという。

 米スタンフォード大学(Stanford University)の研究者らが主導した今回の研究によると、「難民の流出によって農業(の規模)が著しくし縮小し、その結果、かんがい用水の使用も大幅に減少した」という。

 研究では、ヤルムーク(Yarmuk)川とヨルダン(Jordan)川の流域に着目した。この一帯では、シリア、ヨルダン、イスラエルが国境を接している。

 紛争が継続中で、現地での直接調査が困難であるため、研究者のジム・ヨーン(Jim Yoon)氏は、米グーグル(Google)の地理画像サービス「グーグルアース(Google Earth)」で処理された衛星画像を今回の研究に用いた。

 流域最大級の表流水の貯水池11か所の画像を調べたところ、その貯水量が49%減少していることが明らかになった。

 また、上空から確認可能な緑地の消失を調べた結果、流域のかんがい地には47%の減少がみられた。

 論文の主執筆者で、スタンフォード大の地球・エネルギー・環境科学部のスティーブン・ゴアリック(Steven Gorelick)教授の研究室に所属するマーク・ミュラー(Marc Muller)氏(博士課程修了研究者)は「紛争と水資源の間の因果関係を実証するために、紛争地帯で大規模なリモートセンシング分析の実施に成功したのは、今回の研究が初めてだ」と指摘し、結果は「その影響が非常に強く、まさに一目瞭然だった」と述べた。

 2011年3月に反政府運動の高まりとともに始まったシリア内戦では、これまでに30万人以上が死亡している。(c)AFP