【11月30日 AFP】コロンビアで28日に墜落した旅客機の乗客の中には、無名の状態から一躍南米王者の座を狙う位置へと上り詰めるという、まるでおとぎ話のような旅路を終えようとしていたブラジルサッカーチームの選手とスタッフらが含まれていた。

 ブラジルのプロサッカークラブ「シャペコエンセ(Chapecoense)」の選手らを乗せたラミア・ボリビア航空(LAMIA Bolivia)のチャーター機は28日夜、コロンビア第2の都市メデジン(Medellin)近郊で墜落し、71人が死亡した。

 現時点で確認されている生存者は6人のみで、救助隊や航空当局によるとうち3人が選手、2人が乗員、1人がジャーナリストだった。

 シャペコエンセは30日、南米サッカー連盟(CONMEBOL)主催の国際大会コパ・スダメリカーナ(2016 Copa Sudamericana)決勝の第1戦で、コロンビアのアトレティコ・ナシオナル(Atletico Nacional)と対戦する予定だった。またとない栄光をつかむチャンスを与えられた同クラブの夢物語は、この大惨事によって残酷な終わりを迎えた。

 シャペコエンセはほんの数年前まで、ブラジル下位リーグでくすぶっている弱小チームにすぎなかった。車を買えない選手らはバスでトレーニングに通い、チームが拠点とする南部サンタカタリナ(Santa Catarina)州の人口20万人の都市シャペコ(Chapeco)のスタジアムにはジムは併設されていなかった。

 無名チームから強豪チームへの変貌は、4部入りした2009年に始まった。2014年には1部リーグに食い込んだが、チームはそれでも満足しなかった。この時点でもチームは地元からほぼ無視され続け、国内紙グロボスポルテ(Globoesporte)によるとホームゲームには7000人ほどしか足を運ばなかったという。

■一躍スターチームに

 シャペコエンセがコパ・スダメリカーナへの初出場を決めたのは昨年。そこでチームは目覚ましい活躍を見せた。

 初の国際トーナメントとなった同大会で、チームは予選で敗退したものの勇敢なプレーを見せ、アルゼンチンの名門リーベル・プレート(River Plate)にさえ勝ち星を挙げた。

 しかし今年は逆風に見舞われていた。チームに奇跡をもたらした監督が去り、後任のカイオ・ジュニオール(Caio Junior)監督の下で迎えた初戦では下位クラブのクイアバ(Cuiaba)に敗北を喫した。

 それでも同チームは巻き返しに成功し、アルゼンチンのインデペンディエンテ(Independiente)とアトレティコ・ジュニオール(Atletico Junior)に勝利。コパ・リベルタドーレス(Copa Libertadores de America)王者であるアトレティコ・ナシオナルと決勝で対戦することになったシャペコエンセを、弱小と見る向きはもはやなくなっていた。(c)AFP/Rosa SULLEIRO