【11月25日 AFP】大量の熱を蓄えた海水と北向きの風が、北極域での異常な高気温を引き起こしており、気候変動の「悪循環」がそれに拍車を加えているとの研究報告が24日、発表された。

 北極の天候の変化を1時間ごとに追跡記録しているデンマーク気象研究所(DMI)が発表した観測データによると、極氷冠上空の大気の温度が、平均を9~12度上回る状態がこの4週間続いているという。

 DMIの気候研究者のマルティン・シュテンデル(Martin Stendel)氏によると、北極点(North Pole)上空の温度は先週、数日間にわたって0度を記録し、11月中旬の例年の水準を約20度上回ったという。

 シュテンデル氏はAFPの取材に、人工衛星による観測データ収集が開始された1979年以降の記録としては、先週の気温はずば抜けて高いと述べ、「現在観測されている状況は、極めて異常だ」と付け加えた。

 北極の海は夏季の海氷融解で露出するが、例年のこの時期には、その表面に毎日数千平方キロの氷が張り、再び凍結する。だが今年は、それがまだ起きていない。少なくとも例年と同様のペースでは起きていないと、シュテンデル氏は指摘する。

 また、電話での取材に同氏は、「氷が通常通りに成長していないだけでなく、暖気の流入によってさらなる融解が起きていた」と説明した。

 米国立雪氷データセンター(NSIDC)の報告によると、10月の海氷面積は約640万平方キロで、観測史上最小だったという。北極圏でも、2016年9月16日に約414平方キロと史上最小を記録した。

 科学者らによると、いくつかの要因が、10月下旬以降の北極の異常な高温を引き起こしているのだという。

 最も直接的な要因は、欧州西部とアフリカ西海岸沖から吹き上がってくる暖風だ。

 仏気候環境科学研究所(LCSE)の科学者、バレリー・マソン・デルモッテ(Valerie Masson-Delmotte)氏は「この熱を運んでくる暖風は、一時的なものだが、ほぼ前例のない気象現象だ」と説明した。暖風は、24日以降になってようやく和らいできたという。