人気ミュージカルの出演者、劇場で次期副大統領にメッセージ読み上げる 米国
このニュースをシェア
【11月20日 AFP】米ニューヨーク(New York)のブロードウェー(Broadway)で18日、人気ミュージカル「ハミルトン(Hamilton)」の出演者が、劇場を訪れた次期副大統領のマイク・ペンス(Mike Pence)氏に向けメッセージを読み上げ、ドナルド・トランプ(Donald Trump)次期米大統領の政権が全ての米国人のために働くことを求める異例の一幕があった。
「ハミルトン」は今年6月、米演劇界で最高の栄誉とされるトニー賞(Tony Awards)の11部門で受賞した絶大な人気を誇るミュージカル。植民地時代の米国を舞台に、後に建国の父となった反体制派の若者たちを描く作品で、劇中では米国民の多様性と移民の貢献が賛美される。
同作品で主役を務める俳優のハビエル・ムニョス(Javier Munoz)さんは、同性愛者でHIV陽性であり、がんを克服した過去を公言している。
権利活動家の中には、トランプ次期政権が同性愛者の権利を尊重しないのではないかと危惧する声もある。
カーテンコールの際、劇中でアーロン・バー(Aaron Burr)元副大統領を演じるブランドン・ビクター・ディクソン(Brandon Victor Dixon)さんはペンス氏に向けて、今月8日の大統領選で共和党のトランプ氏が勝利した後、人々が抱いている懸念を記した声明を読み上げた。
次期副大統領に選出されたペンス氏は中西部出身で、堅い信念を持つキリスト教保守派の人物。ディクソンさんは、ペンス氏が同ミュージカル観賞に訪れたことに感謝の意を述べた後、「私たちの声を聞いてください」と語りかけた。
ディクソンさんはペンス氏への声明で、「私たち、多様な顔を持つ米国は、あなた方の新政権が、私たちやこの地球、私たちの子どもたちや親を守らず、奪うことのできない私たちの権利を守らないのではないかという危機感を抱いています」と述べ、さらに「このミュージカルを観たことによってあなたが米国の価値観を守ろうという思いを抱き、私たち全員のために働いてくださることを願っています」と付け加えた。
またディクソンさんがペンス氏に対し「ハミルトン」が「あらゆる人種の、さまざまな志向や信条を持つ多様な男性と女性のグループ」によって上演されていると話すと、観客から拍手喝采が起こった。
ペンス氏が同ミュージカル観賞のため劇場に入った際、観客はブーイングと声援が入り混じった反応を示していた。
米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によると、ディクソン氏が声明を読み上げ始めた時ペンス氏は劇場から出ようとしていたが、出口に立ち止まって声明を最後まで聞いたという。ペンス氏はコメントを出していない。
19日朝、トランプ氏はツイッターで、「私たちの素晴らしいマイク・ペンス次期副大統領が昨夜劇場で、カメラのフラッシュが光る中、『ハミルトン』の出演者にハラスメントを受けた」「こんなことは起きるべきではない」と述べた。
トランプ氏はさらに別のツイートで「劇場はいつでも、安全で特別な場所であるべきだ。『ハミルトン』のあの出演者は昨夜、善良な男性であるマイク・ペンス氏に対してとても失礼だった。謝れ!」と述べた。(c)AFP